6月8日(水)
ルーラ大統領訪日の際に設置が決まった日伯二十一世紀協議会のメンバーに選ばれた横田パウロ氏が七日、自身が理事長を務めるサンタクルス病院で会見した。政治経済分野の協力や、在日ブラジル人コミュニティーが直面する教育・医療問題への日本政府の今後の取組みなど、大統領訪日の成果を報告。同協議会の今後の活動について「日本とブラジル双方向の交流が求められている。これから行動計画の策定に向けた話し合いが始まる。議論の門戸は開かれているので、皆さんの意見を寄せて欲しい」と協力を呼びかけた。
冒頭、今回の訪日を振り返り、「ブラジルが愛知万博に参加しなかった件や、ブラジルと中国の関係緊密化など、日本政府サイドにいくつかのためらいがあった」と述べながらも、両国首脳の共同宣言を評価。
国連改革への協調、日伯関係活性化に向けた投資環境の整備、エネルギー資源協力や日本からの経済ミッション派遣などの合意事項について、「肯定的な結果を得られた」と述べた。
首脳宣言には、日本移民の対伯貢献とともに、在日ブラジル人の日本社会への貢献が明記された。医療や年金、教育など現在の在日ブラジル人コミュニティーが抱える諸問題にも光が当てられた。
現在日本国内のブラジル系学校は百三十校。サンタクルス日伯慈善協会では、関係団体と協力しながら日程子弟教育への援助を進めている。今年十月には日伯両政府の主催で青少年教育に関する作業部会が日本で開かれるほか、成人向け日本語教育への取組みも始まる。
ポルトガル語教育については、JETプログラムを利用して今後五年間で千人の教師を日本に派遣する計画。さらに、テレビを通じた遠隔教育の可能性についても言及した。
医療、保険の問題に関しては、「日本に残した家族への生活保障問題を司法の問題として扱えるよう両国の関係者で調整を進めている」と話した。二国間にまたがる年金積み立ての問題についても、今年十月に両国の相互協定締結を検討する両政府の作業部会が開かれる予定。
サンタクルス病院では、日本に暮らすブラジル人向けに、ポルトガル語で書かれた健康手引き書を出版するほか、日本の医師が同病院でインターンとして働く制度を検討中だという。
さらに、三年後に控えた日本移民百周年については、「〇八年をメドに様々な文化・教育プロジェクトが展開されるだろう」と見通しを語った。芸術家やジャーナリストの交流事業や、映画祭、両国書籍の翻訳など文化、科学技術のほか、青年交流を予定。〇八年には日本から過去最大規模の展示会開催も検討されているという。
一方、将来の日伯関係活性化を目的に設置が決まった日伯二十一世紀協議会は、日本側では河村建夫元文相や経済界代表、ブラジル側はバーレ・ド・リオドセ・インターナショナル前会長、ウジミナス社長ほか岡本パウロSEBRAE会長、映画監督の山崎千津薫さん、横田理事長らがメンバーに名を連ねている。ブラジル側協議会は、今年八月にブラジリアで最初の会合を開催。〇六年末までに、今後の日伯交流プロジェクトに関する行動計画をまとめ、両国政府に提出したい意向だ。
「協議会で話し合われる両国間のプロジェクトは、ブラジルの日系社会や日本のブラジル人コミュニティーに限られたものではなく、両国の国民全てに向けたものになる」と呼びかけた。
また、協議会と百周年祭典協会との関係についての質問に対し、「何らかの対話の場を持つべきだと思う」と述べ、「二十一世紀協議会は政府間レベルの機関。日系社会のイベントに関しては百周年協会が、日伯両サイドの話については協議会を通じて行うことになるだろう」との考えを示した。