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「ギアナ高地の伝言」地球にいる感動共有=植物学者の調査に同行=岡村さん新作語る

2005年11月30日(水)

 「この仕事を通じて、地球にいることの感動を共有させてもらった」。サンパウロ市在住の記録映像作家、岡村淳さんの新作『ギアナ高地の伝言=橋本梧郎南米博物誌』(二〇〇五、一時間四十三分)の上映会が十一月二十六日、サンパウロ市内のレストランぶえので行われ、そう制作過程を振り返った。主人公である植物学者、橋本梧郎さんら関係者約十五人が観賞した。
 今年一月中旬、九十二歳の橋本さんが長年の夢として抱いてきたベネズエラ奥地での植物相調査を実施したのを同行記録した作品だ。息を飲むような秘境の神秘的な映像とともに、橋本氏との長い付き合いから生まれた映像の数々が見ものだ。
 二十億年前の地殻の軟らかい部分が風雨に浸食され、固い岩盤だけが台地状に残ったギアナ高地。地上から隔絶された孤高の環境を保存する秘境として、世界的に有名。テプイといわれる、切り立った卓状台地が百以上も散在する。最高峰は標高二千七百七十二メートルのロライマ山だ。
 異常気象による予想外の悪天候のため、予定ギリギリでなんとかヘリコプターで台地の上に――。そこにしか生息しない壺状の食虫植物ヘリアンホラにも偶然遭遇し、橋本さんが高齢にも関わらず「もっと近寄りたい」と危険な足場で身を乗り出すシーンからは、移住者としての生涯を植物学にかけてきた強烈な情熱がうかがわれた。
 従来日本では秘境イメージを強めるためか、「台地の上の植物は七五%以上がそこにしか生息しない」的な報道が多かったが、今回の調査で、大半の種は台地周辺の平地部でも観察できることが分かった。
 同行者の一人、ブンバ編集長の細川多美子さんも「荒涼としたテプイの上は、橋本先生にとっては金銀財宝だった」と、コナン・ドイルの小説『失われた世界』の舞台にもなった場所を思い起こす。
 橋本さんは上映後、監修者としてさっそく植物名の修正を指示。「ブロメリアの仲間で食虫植物があるのは、あの辺にしかいない。山のてっぺんの植物種は少ないが、非常に珍しいものがある。テプイの上に立てて満足した」と語り、「大変よくできた作品だ」と賞賛した。
 約十三時間撮りためた映像から編集し、先ごろ完成させたばかり。前作『アマゾンの読経』は全伯各地で自主上映会が行われた。「今回もお呼びかかかれば、私の立会いのもと上映をしていきたい」とし、各地での鑑賞の要望に応じたいとの希望を語った。連絡は電話11・2276・4491、またはメールokamura @brasil-ya.comまで。

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