ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

 どこまでが日系人なのか――。広島の幼児殺害事件のペルー人に関して、日系人であるかどうかが、やけに熱心に取り沙汰されていて気になった▼どこを基準にするかで○世という言い方は決まる。日系二世は親が日本生れで、子どもがブラジルの場合。現在増えているのは、日本生まれの在日〃二世〃(日系ブラジル人としては三世や四世)だ。在日二世と表記した場合、出稼ぎではなく、移住者としての扱いだ▼仮に、在日二世(日系四世)が日本で育ったら、国籍こそブラジルだが、実態としては日本人に先祖帰りするようなものだと思う。特に純血だった場合、曽祖父が日本から来て、祖父と父の二代はブラジルで過ごしたが、四代目にして再び日本へ戻った格好だ▼たった二代しか経なかったブラジル時代ゆえに、四世をガイジンとしての突き放すのか。それとも、曽祖父以前に日本民族として過ごした数十世代、何百~数千年の歴史を尊重し、日本人に戻ったと認識するのか▼日系四世であると同時に、日本民族としては何十世でもあるわけだ。先祖帰りしたと認識するなら、日本で育つ彼らに日本語を母語として教育してなんら差し支えない▼ドイツでは一九五〇年ごろ、何世紀も前に東欧へ移住した約四百万人の人々が引揚げるのを受け入れた。だが、彼らの数は在外国人統計に含まれていない。日本人の「民族意識」を冷静に議論するよい機会かもしれない▼日本国内で起きている「先祖帰り」をどう認識するか。〃日系人〃という言葉の周辺で起きている様々な事象も踏まえた上で議論を深めてほしい。   (深)

05/12/15

image_print