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娘のために謝罪して=静岡・死亡事故=加害者の日系女性帰国、不明=サンパウロ市本籍地=知人が居住=「連絡先知らない」

2005年12月16日(金)

 【既報関連】「日本に帰ってきて罪を償い、理子の前でたった一度でもいいから謝罪をしてほしい」。十月十七日に静岡県湖西市で起きた自動車事故で、愛娘の山岡理子ちゃん(りこ、二歳)を失った母親(40)=静岡県西部在住=はそうニッケイ新聞にコメントを寄せた。事故を起こしたフジモト・パトリシア容疑者(31)はその六日後にブラジルへ帰国。十四日、静岡新聞の協力などにより独自ルートで入手したフジモト容疑者の本籍地、サンパウロ市南西部の住宅に行くと「ただの知り合い」という日系一家が住んでおり、血縁関係を否定。同容疑者の連絡先を訪ねると、「日本人はデカセギを差別している」などと抗議をはじめた。
 六日付けで本紙が報じた静岡新聞の転載記事にあったように、事故は十月十七日に湖西市鷲津の交差点で起きた。派遣社員フジモト・パトリシア容疑者がのった軽乗用車が、山岡夫妻の乗用車に衝突し、後部座席に乗っていた長女、理子ちゃんが即死した。
 事故当初にフジモト容疑者を取り調べたが、その六日後に勝手に帰伯。山岡さん方に一度も謝罪にも訪れていない。その後、目撃者の話から、ブラジル人女性の信号無視の可能性が高いとして、新居署では業務上過失致死の疑いで逮捕状をとった。
 本紙が独自に入手したフジモト容疑者の本籍地は、サンパウロ市南西部ロリノーポリス区にあった。高級住宅街のモルンビー区のすぐ隣、ショッピング・ブタンタンにほど近い地区にある一軒屋だ。
 十四日午後、本紙記者が到着してまもなく、六十歳前後とみられる日系男性と二十代後半の日系青年が家から出てきたので、「パトリシアはいるの?」と聞くと、青年は「日本じゃないの」と小声で答え、なにも言わずに車で出て行った。
 中年男性に「彼女はここに住んでいたの」ときくと「昔、住んでいた」という。関係を尋ねると家族でも親戚でもなく、「ただの知り合い」だという。「彼女がどうしたんだ?」との質問に、事故の概要を伝え、遺族から送られてきた理子ちゃんの写真を見せると感情をむき出しにした態度になった。
 パトリシアの連絡先を教えてくれないか――と尋ねると、「いちいちデカセギに行ったただの知り合いの連絡先なんか知らない」と中年男性は怒ったように答え、「パトリシアは一度もここに住んでいなかった」と言いはじめ、「日本はデカセギしているブラジル人を差別している」などと日本人批判をはじめた。
 一方、静岡県にある、二歳十カ月だった愛娘を亡くした山岡さん方では、この十一月に三歳になるはずだったその日に、残った家族でケーキを食べ、寂しい誕生日を祝った。
 同夫妻はフジモト容疑者にも子どもがいると聞いており、「もし、逆の立場で自分の子が同じ目に遭ったら、どうしますか」と問いかけている。「ぜひ、日本に帰って理子の前で謝罪をしてほしいと切に願います。それが自分も同じ子どもを持つ親のつとめではないでしょうか」と猛省をうながすメッセージを寄せた。
 同県警では、ブラジルにいる容疑者との連絡がとれず、国外にいるために強制的に調べる手段がない。ブラジル帰国を報じる静岡新聞記事は四段見出しの大きな扱いであり、今件への注目の高さを表している。愛知県についで多数の日系ブラジル人を抱する静岡県で起きたことだけに、日系人全体のイメージに及ぼす悪影響はまぬがれない。

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