2005年12月20日(火)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十九日】香港で開催されていた世界貿易機関(WTO)閣僚会議は十八日、山場だった農業補助金を最終期限二〇一三年を以って廃止することで合意し閉幕した。アモリン外相は執拗なEU代表の非難を浴びる中、米代表とWTOとの非公式決着で最終段階にこぎ着けた。しかし実質的廃止はブラジルの要求通り一〇年が目処となった。各国の国内市場でまだ問題を残すものの農業補助金問題に最終期限を設けたことで、シアトル会議やカンクン会議のような最悪事態は免れた。また先進国が最貧国五十カ国からの輸入品に課している九七%以上の高率関税を廃止することも合意した。
ブラジャーとパンティだけ残し裸状態のEUから、ブラジルが最後の一枚を剥ごうとしていると、アモリン外相は非難された。その白熱の論戦が交わされたWTO閣僚会議が、輸出向け農産物補助金に一三年という区切りをつけ閉幕した。
マンデルソンEU代表は、アモリン外相とポートマン米代表、レミーWTO事務局長を「私を袋叩きにしようとするギャングたち」と呼んだ。英語では通常会話に使う「悪ガキ」くらいの慣用語で、ポ語が持つギャングの意味合いはないらしい。
農業補助金廃止に向け明確な目処がついたことで、全員が痛み分けをした決議となった。一三年の全面廃止は〇七年全面廃止を謳ったドーハ・ラウンドとは程遠いが、その中間を取って一〇年を以って実質的廃止で手を打ったようだ。
最終日の前日である十七日、グリーン・ルーム会議が緑色ではない会議室で開催された。加盟百五十カ国の中から主だった三十カ国代表が招かれた。席上EU代表は、一〇年は無理だが、一三年なら何とかすると意思表示した。
アモリン外相は、EU代表の掛け金値引き交渉と読み、一〇年からの分割払いと思えば容認できると解釈した。同会議は二十四時間以上にわたる不眠不休の論戦で一夜を明かし、太陽は南シナ海の海上高く上った。ジャマイカ代表がいかなる決議にも応じるといって退場したため、会議が終了した。
グリーン・ルーム会議でEU代表に一部EU加盟国から一三年説を拒絶するメモが渡され提案を撤回、アモリン外相が激怒して退場する場面があった。日本代表が伯外相をなだめ会場へ連れ戻した。これで実質廃止一〇年、全面廃止一三年が決まった。ギャング呼ばわりがあったのは、その直後であった。
EUが固執した輸出農産物への補助金は年間二四億ユーロ。先進国全体で国内市場も含めて一〇〇〇億ユーロ以上が支出されている。国際貿易を歪めるのは補助金を受けて輸出される農産物だ。輸出クレジットという隠れみのがあるため、香港会議の補助金廃止で喜ぶのはまだ早いと関係者は警告する。
先進国は農業生産者保護のため数々の補助制度を設け、国内市場には補助金つき農産物が出回り、輸入農産物の来襲を防いでいる。他に破格の大量輸入品に対抗するため、セーフガード方式(緊急輸入制限)もある。香港会議の合意はこれら国内市場の細部には触れていない。