ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

 「ブラジルにも良心のある人たちはいる。あんなことは許されない」。読者からのそんな声が届いた。静岡県で交通事故を起こして日本人女児が亡くなった件で、フジモト・パトリシア容疑者が帰伯逃亡したことを報じる本紙記事を読んだ方からの電話だった。まったく同感だ▼その女性読者は続けた。「私にも二世の子どもが四人いるが、そんなことは信じられない。裁きを受けないといけない。何より、遺族の前でご冥福を祈ってきなさいといいたい」と怒気を含んだ語調だった▼残念ながら、帰伯するデカセギ逃亡者は増加中だ。この五年間だけで、実に二百三十一人もが日本から逃亡した。デカセギブーム初期からなら、いったい何百人になることか…。めまいすら覚えそうな数字だ。なかにはこの十一月に浜松で起きた強殺事件のような凶悪犯まで混じる▼この年末、帰伯逃亡した日系容疑者らは、知らん顔してぬくぬくと家族と年越しフェスタでもするのだろうか。それでは日本の被害者家族はあまりにやりきれない。これら事件の積み重ねで、日本における日系人全体への印象が徐々に悪化していることは否めない。ブラジルで百年かけて築いてきた「信用できる日本人」というイメージは、皮肉なことに祖父の国で崩されている▼世界は狭くなった。逃亡先の当地日系社会側は何ができるのか。時代に対応した法整備が求められている。例え地球の反対側へ行っても、簡単には逃げられないのだと犯人を諦めさせるような抑止力が必要ではないだろうか。  (深)

05/12/22

image_print