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秋田犬=主人に従順=非日系人の間でも人気=ブラジルで〃市民権〃獲得=協会組織されすでに20年

2005年12月28日(水)

 忠犬ハチ公で知られる秋田犬。根は激しい気性だが、主人には従順でおとなしいことから、非日系人の間でも人気が高い。秋田犬協会といった組織も存在。外国から審査員を呼んで、品評会なども企画されている。そもそも、日本移民がブラジルに持ち込み、子孫を増やしていった。〇六年は戌年だ。サンパウロ市内に犬舎を所有し、秋田犬を育てている鶴賀英治さん(71、鳥取県出身)、萬里子さん(70、二世)夫妻を訪ねた。
 秋田犬を六匹飼っていると聞いたので、さぞかし賑やかなのだろうと思った。しかもサンパウロ市ジャルジン・ダ・サウーデ区の住宅街。もしや、近所に迷惑がかかっているのかもと変な勘ぐりもした。
 が、番犬として玄関前につながれている一匹に吠えられただけ。自宅裏の犬舎からは、特に何も聞こえてこない。主人の鶴賀さんは「秋田犬は主人に従順で、無駄吠えもしないんです」とのろけた。
 居間の一角は大小さまざまなトロフィーや彫刻品で埋まり、保管場所に困っているようだ。「『犬ばっかりかわいがって』と、孫が嫉妬するんですよ」。
 〈秋田犬を連れて、山登りに出かけた。ところが、足を滑らせて滝に落ちてしまった。まっさきに犬が滝に飛び込んで襟をつかみ、安全な場所まで付き添って泳いでくれた〉
 栄治さんは一九七〇年、兄の知人で、日本を代表する犬舎を持つ松田百合子さん(故人)を訪問。彼女の体験を聞いて決心した。ブラジルで飼いたい──。
 秋田犬をブラジルに持ち込んだのは一九七〇年の暮れ。「動物の輸入が解禁となってまもなくのことだった。秋田犬第一号ではなかっただろうか」と自負する。
 空輸となれば、経由地で水を飲ませるだけで餌は与えられない。そのため、体力がついた生後三カ月以上の犬が対象になる。松田犬舎から「国友号」、「雲美号」のつがいを郵送してもらった。いずれも血統書つきの犬だった。
 その後、ブラジルで掛け合わせや輸入が増加。それにつれて愛好家も増えた。「ポルトアレグレには、二十匹飼っている大学教授もいますよ」と鶴賀さん。
 秋田犬協会(アニタ・ソアレス会長、会員数八十人~百人)がブラジルで組織されて二十年ほどになり、品評会なども行われている。〇三年に八百九頭、〇四年に五百三十四頭の登録があった。
 非日系人に人気がある理由について、鶴賀さんは主人に忠実だからだと考えている。「番犬だからといってもむやみに吠え立てないし、交尾の時期に苛立っていても、飼い主に噛み付くことはありません。子供を残して家を空けても、きちんと留守をみてくれますよ」。
 大型犬なので飼うのにスペースが必要。品評会に出品するとなると、相当の投資がいるかもしれない。散歩に出かけることで、健康増進にも役立っているという。それぞれの力が強いため、まとめて連れ出すわけにいかない。そのため、数回に分けて散歩に出ることになり、一日に十キロ歩いている。
 萬里子さんは「七十歳になるけど、どこにも異常がない。妹がうらやましがるんです。これも犬のおかげね」とにっこりした。

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