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大豆の里、イグアスー移住地の試み=ブラジルの新品種栽培=生育状況に関心高まる=より安全な営農形態模索

2006年2月4日(土)

 非遺伝子組み換えでタンパク質含有量が高く、人体にやさしい大豆の一種として知られている『オーロラ』の代表的な栽培地であるパラグァイのイグアスー移住地で、今期(二〇〇五―〇六農年)もブラジルで開発された新しい品種が導入された。
 中でも注目を集めているのが、BRS244とCD212の二種。BRS244はEMBRAPA(ブラジル農牧調査研究公社)で、CD212はCOODETEC(パラナ州農協の農事試験場)で、それぞれ開発された品種。去る一月二十七日には、イグアスー農協(内山新一組合長)が組合員を対象に栽培ほ場の現場視察を実施。同農協のベルナルデーノ・オルキオラ専任技師が先導し、JICAパラグァイ総合農業試験場(CETAPAR)から複数の日本人専門家が同行した。
 この視察は、種子になりそうな品種の生育状況を総合的に把握して、次期作(〇六―〇七農年)の対応の目安をつけることが主たる目的であったため、ブラジルからの新品種の生育状況に関心が高まっていた。
 移住地における今期の大豆栽培面積は、前期とほぼ同じ約一万九千ヘクタール。初めて試みるBRS244とCD212の栽培面積は、それぞれ、五ヘクタールと百十五ヘクタールだ。『オーロラ』は千九十七ヘクタール。
 移住地は直前二期(〇三―〇四、〇四―〇五農年)連続で深刻な干ばつ被害を被ったため、今期の大豆の生育に関係者の特別な期待が込められている。このような背景があり、二十七日の現場視察には栽培農家の熱気がこもっていた。
 視察に立ち会った農協の堤広行理事(青森県、東京農大卒)は、「今日見たかぎり、ブラジル種は概ね良好だった」と安心した面持ち。二月に降雨があれば申し分ない状況まで好転してきていることを暗示している。
 ベテラン農家の一人、石井悟さん(山形県)は、「新品種の良否は耳情報だけで判断するのは難しい。作物のローテーション、前作との関係など、要素がいろいろあり、的確な判断はまだ早い」としながらも、他の参加者と同じ視点で見たブラジル新品種の良好な生育に胸をなでおろしていた。
 十月―十一月から翌年三―四月までのイグアスー管内における大豆栽培期の気候、特に降雨が不安定な近年の環境から判断して、特定の品種にこだわることなく、早生・中生・晩生、乾燥に強い種など複数の品種を組み合わせた栽培への移行が安全な営農形態であることも示唆してくれた現場視察であった。
 今年、入植四十五周年を迎える『大豆の里』で持続的要素を持つ営農に向けての試行錯誤はまだまだ続きそうだ。(渡辺忠通信員)

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