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今年の大統領選挙をこう考える=ソールナッセンテ人材銀行代表=赤嶺 尚由=連載第2回

2006年2月17日(金)

 先につい本日の私の報告の結論を先に申し上げかけたところで、続いて何故そう見るのか、何故そう考えるのかを説明するのに、是非とも追加補足して置かなければならない重要な数多くの事柄があることに気付きました。現職の大統領という大変に恵まれた立場にあって、まだいろんな行政マシーン(機関)をフルに利用できるルーラ候補(60歳)がまず最低賃金をこれまでの三〇〇レアルから四月一日にインフレ上昇分を差し引いても実質一一%増の三五〇レアルへ、選挙効果を大いに意識もし、計算にも入れた非常に思い切った調整措置を早々に発表しています。
 単に最賃だけを引き上げればいいというものではなく、年金恩給への連動調整分と他の政府支出面へ及ぼす影響も計算に入れれば、四六億レアルもの思わぬ追加支出を覚悟しなければならず、現在の政府財政の下ではちょっと許されないようなかなり思い切った引き上げが行われる訳です。そこで、再選続投を図る上で、一体、今回の最低賃金の調整からどの程度のプラス効果の追い風を受けることが出来るのかどうかが、まず極めて重要な要素になる筈です。更に又、その最賃の使い方一つで秘密兵器みたいな威力も発揮しそうに思われます。
 その反対に、一方のセーラ陣営は、政治面でまず一般国民に味方すべき筈の時の政権と政権与党を巻き込み、闇の世界の中でやり取りされた政治買収資金の内、使途不明金だけでも、依然として五〇億レアルから六〇億レアルに達し、遂に史上最大の規模に達してしまったという風に伝えられる今回の超大型の不正汚職事件を徹底的に追及しながら、そして、大統領陣営に積極的に攻め込んで、着実に得点を積み上げて行く作戦を展開する筈です。
 ご参考までに、時の政権と政権与党を巻き込んでブラジル史上最も大きな規模の不正汚職に発展してしまった今回の事件から、ルーラ候補が大統領選挙の面で受ける打撃は、既に二〇%程度の世論調査の面での支持率の下落となって現れているように見られています。勿論、支持率は、エレベーターのように常に上下しますが、私には、どうも支持率二〇%内外の下落のままで、決選投票の段階を迎えそうな気がしてなりません。世論調査の面での水準での支持率の低下がずっと続くものと仮定して、二〇〇二年に決選投票の段階に進んだ時の二人の票数を基礎にしてシロウトである私なりの試算をして見ました。
 まず、ルーラ候補の獲得した五二七九万票(六一・三%)から二〇%マイナスしたら、四二一〇万票となり、反対にセーラ候補が獲得した三三三七万票にそのまま二〇%をプラスしたら、四三九七万票となり、一八〇万票台のまだ激戦と表現しても良い展開をすることが判りました。しかし、これは、私というド素人の試算ですから、飽くまでご参考までにという意味合いしか込めていません。
 又、セーラ候補は、併せて経済財政面で、インフレを抑制し、経済安定を図ることだけを目的とした高金利政策やプライマリー(基礎的)財政収支の黒字目標を達成する強烈な引き締め政策からそろそろ軸足を経済成長の方に移して行って、雇用の促進、所得分配、貧困対策等へ繋いで行く必要性を訴えながら、総人口一億八〇〇〇万人の内、凡そ九五〇〇万人内外に達していると見られるこの国の有権者から、一体どれ位の支持を集めることが出来るのかどうかに勝負の鍵がかかっているように判断されます。

■今年の大統領選挙をこう考える=赤嶺 尚由(ソール・ナッセンテ人材銀行代表)=連載第1回

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