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松柏・大志万=「ゴミをゼロに」講演会=リサイクルの大切さ訴える=鈴木さん「ブラジルでも挑戦を」

2006年4月7日(金)

 人類に残された石油は、コップに例えた富士山より少ない量しかないのです――そう深刻な環境問題を提起するのは、東京都在住の鈴木武さん(63、山梨出身)だ。三月三十一日に松柏・大志万アソシエーション(本田剛志会長)主催で行われた「ゴミをゼロに」講演会には約六十人が訪れ、二時間近くにわたって身近で切実なリサイクル問題に耳を傾けた。
 「地球規模の環境異常があちこちで起きています。子どもたちのために、みんなで取り組みませんか」。マイクを通さずとも、元気のいい快活な呼びかけが講堂にひびく。
 A4コピー用紙は割り箸三膳分の木材を使う、など分かりやすい説明を畳み掛けるように続ける。「紙には生命がある。ちぎった時に見える繊維、これが命です。五~六回も再利用できるので捨てるのはもったいない。その分だけ森林破壊を止めることになる」。
 聴衆に金属片をまわす。金塊だ。「この百グラムの金の塊は、携帯電話に使われているものを再生したもの。いったい幾つの携帯電話の基盤をかき集めたらこの固まりになるか分かりますか?」。本物の金塊をみる機会はめったにないだけに、みな真剣に眺める。答えは四千~五千台分。
 実に分かりやすいリサイクルの例だ。
 鈴木さんは現役時代、松下通信の横浜工場に勤務。約六千人が働き、九一年には約六千トンのゴミが排出されていた。九六年から担当者となり、本気でリサイクルに取り組むと廃棄物の量が減ると共に、リサイクル率が上がりついに九九%を実現。事実上、ゴミをゼロにした。無くなったというより、ゴミとして埋めるか焼却されていたものを分別し〃資源〃に変えた。
 ゴミの内容をよくみると紙が一番多く、廃棄プラスチック、金属などが九〇%を占めることが分かった。これらを「売る」「購入先に戻す」「無償プレゼント」「資源加工」することで資源にかえた。
 この方式は、のちに松下グループ全体(従業員三十四万人弱)でも採用され、九八%を実現した。
 さらに人口三百五十万の巨大都市、横浜市(中田宏市長)でも二〇一〇年までに三〇%を目指す運動「G30」として結実した。〇一年にはじまり、予想を上回るこの三月末の段階で三四%をすでに達成。「日本ではこの結果が注目をあび、六百件もの問い合わせが殺到している」という。
 ゴミが減ったことで、市内に七カ所あった焼却施設が五カ所で間に合うようになり、二カ所を閉鎖。この二施設の運営費だけで年間三十億円、立て替える場合の費用は一千百億円かかると見積もられていたものが必要なくなり、巨額な経費削減に成功した。
 そのせいで「閉鎖した焼却場周辺のぜんそく患者が劇的によくなった」とのオマケまでついた。
 最後に「ぜひノウハウの提供するので、みなさんも挑戦してほしい。ブラジルだからダメだということはない」と呼びかけた。会場からは大きな拍手がわき、握手をもとめる来場者の姿もみられた。

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