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コラム オーリャ!

 サンパウロ市に着いて、三日目。リベルターデ広場に出かけた。「安全」な国と有名な日本から初めてブラジルに来た。私がここでの新たな暮らしに抱いた心境は、単に「見知らぬ土地に住む」という以上の不安でいっぱいだった。
 露店で、漢字で書かれた額縁の商品を見ていると、「日本人か」と声をかけられる。一世の人だ。ポルトガル語のできない私に「発音が大事だ」とひとしきり語ったあとで、「私は、土日にはここにいるから、またおいで」という。
 何十年も前に、遥か地球の反対側にまで来て、これまで生きてきた。どんな思いだったのだろうと想像が頭をよぎる。それと同時に、今の私には、笑顔で親切な言葉をかけてくれる人がいることに気づく。言語も方角もよく分からない土地での生活に少し安心感を覚えた。(稲)

  06/04/19

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