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帰伯逃亡デカセギ問題――――――浜松市から要望書とどく=検討進め9月に政府提案へ

2006年4月25日(火)

 日本で犯罪を起こして帰伯逃亡するブラジル人への対処を積極的に検討している静岡県浜松市(北脇保之市長)から、職員二人が来伯し、伯日比較法学会の渡部和夫理事長らと面会、市長からの要望書を手渡した。両国で専門委員会を立上げ、具体的な条約の提言を政府に挙げていく方針だという。
 二十一日午前、浜松市の今中秀裕国際課長、土屋勲教育長らは北脇市長からの要望書を、渡部理事長らに手渡した。同市からは犯罪容疑者であるブラジル人三人が帰伯逃亡しており、被害者である地元日本人らが署名活動をはじめた。
 これを報じた静岡新聞によれば、今年九月ごろに日本で開かれる外国人集住都市会議を通じて、同市は犯罪人引き渡し条約の締結を政府にうったえる方針だ。
 二十四日午前、渡部理事長は電話取材にこたえ、「来月十六日に専門家による第一回委員会をはじめる予定だ。日伯両側で委員会をつくり、九月ごろまでに具体的な提案をまとめて両政府に提出したい」との見通しを語った。


   ブラジル民の引渡しは困難


 日本側では、犯罪人引き渡し条約締結に関する議論が進んでいるが、同学会としては例えそれが締結されても、ブラジル憲法により自国民の引き渡しは難しい、と解釈している。むしろ現行刑法では、外国での自国民による犯罪を国内で裁くことは可能であり、その線での具体的な調査が進められるようだ。
 日本側の専門家にも検討をしてもらい、両側から議論を深める意向。日本からどう証人喚問するか、どの経路で証拠品を持ってくるかなど、国際犯罪の司法手続きに関する具体的な課題を詰める。
 現在までに日伯間で同様の裁判例はないとしながらも、米国や欧州とは可能性があるとし、「参考になる判例を詳しく調べたい」と語った。
 同学会は〇二年九月にデカセギ問題に関する国際法シンポジウムを主催し、サンパウロ・ロンドリーナ宣言として発表した。そのときにも司法協力に関する合意がなされ、両国政府に提言された。
 そのなかで、ブラジルの留守家族への送金が絶えたデカセギの問題で、ブラジル内でたくさんの裁判が起こされているが、日本に法務省を通して裁判書類をおくるのに長い時間がかかる。その件への対応も同宣言にはうたわれたが、まだ具体的な対策にいたっていない。
 渡部理事長は、これら問題への対策も視野に入れ、引き渡し条約にかぎらず「司法共助に関する広範な条約」を協議していきたいと述べるとともに、「もっと早く、簡単に法的な対処ができる体制を整備するのが目的です。〇八年の日伯交流年は、条約締結のいい機会。それまでに内容を詰めたい」と語った。

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