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移民政策=時代に対応、修正へ=連載(7)=永住権の取得対象者拡大=NGOの代表者も

2006年7月15日付け

 「一年間で、個人の投資移住額が八倍になったんだ」。移民審議会のニウトン・フレイタス会長の笑いが止まらない。
 移民審議会が決議六十号(二〇〇四年十月)を発布。投資金額を二十万ドルから五万ドルに下げるなど、個人投資家の永住権取得条件を一部緩和したところ、申請者が急増したというのだ。
 「五万ドルで、永住権がもらえるなんて安いもんだと思いません?」。
 個人投資家が規定されたのは、九八年の決議十八号。生産活動に外貨で投資する目的で、ブラジルに定住する意思がある外国人に永住権を与えるというものだった。
 (1)投資計画(2)資金の合法性(3)生産の効果(4)社会的な関心が吟味された。創業するのもよし、既存の企業に投資するのでも構わない。いずれにしても、金額は二十万ドル以上だった。
 ただし、十人以上の新規雇用を生み出すか、社会的にかなり関心のある事業の場合は、要求額に満たなくても、例外的にビザが発給された。
 ビザの有効期限は二年で延長は不可だ。当人がこの期間に、投資プロジェクトの発展状況と、ブラジル人労働者の吸収状況を発表。労働省が評価すれば、永住権を取得できた。
 予想に反して、申請者が増えず、見直しになったわけだ。二十万ドルから四分の一の五万ドルに減額、最初のビザの期限が二年から五年に延びた。
 今井真治さんは「ブラジルの外交政策はプログマチズム(実利主義)。だから、この国に多くのカネを落としてくれる人は歓迎される」と分析する。
 この結果、資金額が〇四年に千七百万ドルだったのが、〇五年に一億千五百万レアルに跳ね上がった。
 法務省は、外国人法の改正案を作成中。〇五年九月にサイト上に発表した文書によれば、草案中に投資額の条件はまだ決定されていない。
 (1)投資の種類(2)新規雇用の創出(3)地域社会への影響などを考慮。金額よりもむしろ、地域の福利に重点を置いているようにみえる。
     ◆
 外国人法が想定していなかった事態について、決議によって解決を図るのが一般的だ。〇六年五月九日に、七十号に達した。これまでの流れを踏まえた、今井さんの判断はこうだ。
 「国内労働者と競合してしまう、外国人は政府も嫌う。能力のある人には、条件を緩やかにしているのではないだろうか」。
 外国人にとって、最大の関心事は永住権の取得だろう。例えば年金生活者や大学教授が一定の要件を満たせば、永住権を得られるのは周知の通りだ。
 つい最近、永住ビザが認められたのはNGO(非政府組織)の代表者や役員。外国に拠点を持つNGOがたくさん、国内で活動を展開している。現行法に規定が無かったため、決議で詳細が決められた。
 (1)社会救済(2)教育・スポーツ(3)貧困撲滅(4)文化振興(5)歴史遺産・文化の保護・保全(6)倫理・平和・人権・社会的権利・民主主義・ほかの普遍的価値の追求(7)国際労働組合代表が対象。
 プロジェクト計画や資金、当該外国人の必要性などが審査される。ビザの期限は最大五年だ。
 今年五月末の時点で「まだスタートしたばかりで、申請が一件もないんですが……」と、フレイタス会長は苦笑い。軌道に乗るまでは、もう少し時間がかかりそうだ。
(つづく、古杉征己記者)
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