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デカセギの現地事情聴く=後藤参議「皆さんと共に取り組む」

2006年7月25日付け

 「『ごまめの歯ぎしり』(無力感に歯ぎしりして悔しがること)という言葉がありますが、みなさんがこの問題に関して、まさにそのような思いでいることが良く分かりました」
 十八日午後、来伯中の後藤博子参議(日伯議員連盟事務局次長、大分県選出)は文協で、デカセギ問題を扱う中心機関である文化教育連帯協会(ISEC=吉岡黎明会長)のメンバーから現地事情や意見を受け止め、そう共感を表現した。
 冒頭、後藤参議はあいさつの中で「外国人労働者に関する法整備は不十分」とし、列席者十四人に活発な問題提起をもとめた。
 同協会は、日本側にもデカセギ問題を扱う全国的なNPO(非営利団体)を組織してもらい、そこと連携することで両国側から解決に向けた働きかけをする方針をもっている。
 さらにISECが提案している、日本各地にNPOの教育団体を組織してもらい、寺子屋(塾)形式で外国人子弟向けに授業をしてもらう構想を説明した。ただし、実際の教育現場にいるブラジル学校代表者から、寺子屋での授業内容が帰伯後に認知されるかという課題なども提起された。
 昨年の両国首脳会議で、五年間で千人の青年を日本へ招聘する計画が発表されたが、それをどうデカセギ問題解決に結びつけるかで熱心な議論が行われた。
 また、デカセギ子弟の教育問題で博士論文を書いた心理科医の中川郷子さんは「外国人の子供は、日本では教育を受ける権利はあるが義務はない。学校に来ければ来てもいい、ではきちんとした教育はできない」とのべた。
 松柏大志万学園の川村真由美校長は「ブラジルで生まれ育った日系子弟は、顔は日本人と一緒でも、考え方は根本的に違う。それが、教師にわかってもらえない。そんなモヤモヤが非行、犯罪に走らせる一因では」と分析した。
 日本にいては分かりづらい複雑な状況や、解決への困難な道のり、日本への大きな期待が次々に語られた。主に日本で問題が発生しており、資金調達の困難さや、意見の統一が図れずブラジルからはなかなか有効な解決策が取れない現状を憂慮する発言が続出した。
 最後に後藤参議は、日伯議連としても教育問題は重要課題ととらえており、日伯二十一世紀協議会の提案の中にも組み込まれるとの見通しを明らかにし、「私は今日の話を持って帰ります。今後とも連絡を取り合い、みなさんとしっかり取り組んでいきたい」と力強く語った。
 出席した酒井清一援協会長(元大分県人会長)は、「デカセギ問題のためにこのような会を開いた国会議員は、後藤参議が初めて。百周年を前に心強い」と感想をのべた。

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