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原爆の語り部、伯国に芽吹く=聖市=杉本さんの熱意実る=樹医、海老沼さんから種譲り受け

2006年8月9日付け

 生命の力強さを原爆の生き証人から感じてもらえれば――。一九四五年八月九日、長崎の上空で爆発した原子爆弾は約七万五千人の尊い命を瞬時に奪った。戦後六十年が過ぎ、被爆の記憶が風化しつつある今年四月、被爆した柿の木の種が見事ブラジルの大地で芽をふいた。樹木医、海老沼正幸さん(57、長崎在住)から種を譲り受けたのは、〇四年にも被爆クスノキの種を発芽させた聖市在住の杉本俊和さん(55、長崎県)。農業を営む知人に生育を依頼していた。「原爆という悲惨な歴史を忘れないためにも、被爆柿の木をブラジルで根付かせたい。植樹を希望する人には苗を無料でお分けしたい」と杉本さんは話している。
 黒く焼け焦げ、見るも無残な姿をさらしていた被爆柿の木。心を痛めていた樹木医の海老沼さんは、九四年、治療に取り掛かった。
 焦げた部分を削り、薬剤を塗り、発泡ウレタンを吹き付ける。
 苦労の甲斐あって柿の木は再生、見事実をつけた。被爆後半世紀を経た初めての結実。海老沼さんは平和への願いを込め、柿の木の苗を全国の子供たちに配る活動を始めた。
 小さな苗とともに年を重ね、成長していく。それが新しい被爆体験の伝え方なのでは――。
 この平和運動に美術家、宮島達男さんが賛同、九十六年、「『時の蘇生』柿の木プロジェクト」を立ち上げた。
 以来、被爆柿の木の植樹運動を全国で展開、子供たちに戦争の悲惨さ、生命の大事さを伝えている。
 海外でもアメリカ、イタリア、韓国など十七カ国で柿の木がすくすくと育つ。学研や日本書籍、光村図書などの教科書にも掲載されるなど、今や被爆地長崎の象徴ともなっている。
 このプロジェクトを耳にしていた杉本さんは県関係者の紹介で昨年十一月、海老沼さんを訪ね、柿の種三百個を譲り受けた。
 「一割も発芽しないんじゃないかな」。発芽させる難しさを海老沼さんは指摘。種は乾燥しており、種苗業者である杉本さんの目にもそう思えたという。
 「全滅しないように」とコチア、イタペセリカ、ピエダーデの知人に種を分け栽培を委託、今年四月、発芽の報告を受けたという。
 「被爆後五十年も経った柿の木が初めて実をつけ、そしてブラジルでもその芽を出した生命力に感動した」と杉本さん。母親が被爆者だけにその話し振りには熱がこもる。
 今年五月に再訪日した杉本さんは海老沼さんに喜びの報告。「記念植樹などの機会があれば、是非ブラジルを訪れたい」と希望を話しているという。
 現在、苗は十七本。霜などの被害を避けるため、ビニールハウスで丹精込めて育てられている。
 「原爆の語り部、そして生きることの素晴らしさを教えてくれる象徴として育っていってほしい」と杉本さんは話し、学校などでの平和学習にも役立ててもらいたい考えだ。
 なお、被爆クスノキがある山王神社から、種の提供を毎年受けている杉本さんは、「昨年はプロの苗業者に育苗を頼んだので、経費五レアルを頂きましたが、今年から知り合いの農家にボランティアで栽培してもらっているのでクスノキの苗も無料で提供したい」と呼びかけている。
 植樹を希望する団体、学校関係者は、杉本さん(11・5589・4376)まで。

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