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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2006年8月12日付け

 文学者や芸能人が政治家になって成功する人もいるが、失敗する者も多い。映画俳優から政界に転じアメリカ大統領になって東西冷戦の幕引きに功績を残したレ―ガン氏は歴史に記録されるだろうし、日本にも参院議長の扇千景氏や石原慎太郎都知事がいる。逆にセックス絡みの猥褻な言動で大阪府の知事を追われるように辞職した横山ノックの例もあるし、こればかりはなんともややこしく難しい▼石原氏の後輩で大学生の頃に「なんとなく、クリスタル」で文壇から脚光を浴び作家として売り出した長野県の田中康夫知事はどうだろう。確かに―県政に改革を持ち込み一定の成果は上げたかもしれない。常に理想を掲げ「夢」を語る姿は格好が良く信州の人々も酔い痴れる。長野の人は理屈っぽく議論が飯よりも好きなのである▼そんな信州人が先の知事選挙で突きつけたのは田中氏への「レッド・カード(退場)」であった。県の悪弊である利権構造を打破したのは認めるが「壊すだけで創らない」の批判が強く、実行派の村井仁氏に投票したのである。確かに―田中氏が最初に出馬したときにはマスコミがこれでもかというほどに持ち上げ支持を表明もした。ところが、知事に就任するやいなや県議会を無視し県庁の人事も目茶苦茶だったらしい▼このために―最大の支援者であった地元の八十二銀行元頭取・茅野実氏らが「反田中」になってしまい、県民の支持も減少に次ぐ減少。結局は県民も「小説作家の田中氏は知事失格」の烙印を押し再選を退けたのは、正しい判定だったと思う。皆さんはどうですか。   (遯)

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