ホーム | 日系社会ニュース | 外山さんの本=労作『百年の水流』出る=コロニア研究の指針にも――総合的に、系統的に、読みやすく

外山さんの本=労作『百年の水流』出る=コロニア研究の指針にも――総合的に、系統的に、読みやすく

2006年9月7日付け

 外山脩さん(フリージャーナリスト)の本『百年の水流」――日本外に日本人とその子孫の歴史を創った先人たちの軌跡――がこのほど、発刊された。コロニアの百年の歴史を総合的に、系統的に、そして読みやすくまとめた大冊である。A5版八百ページ。本の配布は、販売でなく、出版協賛の名目の寄付(一口、六十レアル)を募りつつ行うという形をとる。
 大冊の主な内容は、
(1)水野龍、上塚周平、平野運平らの表裏を素描した初期植民事業、(2)一九二〇年代のブラジルブーム(日系産組、南銀の誕生など)、(3)ブームをつぶした排日法、法案の成立を策した米国の工作、(4)産業組合運動、下元健吉の独創と夢、(5)戦後のテロ旋風、(6)戦後の植民事業の盛衰、(7)六〇年代のブラジルの奇跡の成長の「まやかし」と背景、(8)「まやかし」が招いたブラジル破局への暴走。コチア産組、南伯農協、南銀が渦潮に呑まれていった事実。特にコチアの迷走。
 外山さんは「コチア、南銀を失ったあと、コロニアに残っている共有の財産は〃歴史〃しかない。その歴史はドラマ性が豊かで味わい深い。これを知る者に歴史への愛着、新たな歴史建設、あるいは自身の前進への意欲と知恵を与えてくれる。誰もが、そこから何かを得られる『先人の残した貴重な遺産』だ。したがって、コチア、南伯農協、南銀は失ったが、まだ歴史が残っている、という言い方もできる」といっている。
 本の発行に中村勉・元ブラジル三井物産社長が協力した。中村さんは最近の「移民百周年議論」に関して、「それぞれ(個人、グループ、団体、地域)が身の丈に合った有意義な企画を実行すれば、それを総合したものが、立派な百周年記念事業になる」と提唱。つまり「それぞれの百周年」である。この本発行への協力もその一環で行ったという。
 中村さんの個人ルートで、コロニア、進出企業関係者、および日本からすでにかなりの予約が寄せられている。また、コチア青年連絡協議会、県連、人文研、商工会議所、移民史料館、ブラスビア旅行社、旧コチア産組、旧南伯農協関係者から本の配布に関する理解、協力が得られている。引き続き、協力機関、協力者を開拓中だ。
 鈴木孝憲・元東京銀行頭取(デロイト・トウシュ・トウマツ会計事務所代表)も、会議所の月例昼食会や日系社会の指導者の集まりである「やまとクラブ」でのスピーチで本を推奨している。
 本に関する問い合わせは
中村さん、Eメール bnnkm@uol.com.br 電話15・3249・1398(九月二十日以降)。外山さん(トッパンプレス社気付け)Eメール keiji@tpress.com.br FAX11・3209・3975、外山さん直接は電話11・9846・6852。

image_print