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こどもを読書好きにさせる=「読書へのアニマシオン」――向井ひろこさんが紹介

2006年9月14日付け

 「子どもたちが読書好きになるにはどうすればいいのか」。今月始め、日本アニマシオン協会代表の向井ひろこさんが来伯。八日、ロンドリーナで、日本語教師らを対象に『読書へのアニマシオン』を紹介した。「子どもたちが文字を読む苦痛をなくしてあげる。読書好きになるきっかけを与えてあげる。読書を通して読解力や表現力をつけることができます」と、向井さんは、アニマシオンの手法を勧める。
 「アニマシオン」とはラテン語のアニマ(命、魂)を語源とし、言葉に命をふきこむことを意味している。『読書へのアニマシオン』は、スペインの児童文学雑誌編集者が子どもに幅広い読書体験を積ませ、読書の楽しさを伝えようと開発、体系化されたもので、「子どもの読解力、表現力を楽しみながら伸ばす国際的な読書教育の手法」のひとつ。
 「現在日本では、子ども達の読書離れが進み、そこから読解力、自分の意見を表現する力、コミュニケーション能力の低下が起きています」。国際的な調査で日本は、二十八カ国中三番目に本を読まない国(二〇〇〇年)、読解力は八位から十四位に落ちた(二〇〇三年)ことを紹介。向井さんは「ブラジルの子どもたちはどうですか」と呼びかけた。
 『読書へのアニマシオン』は、スペインで開発された、ゲームや遊びを通して読書好きになる七十五の手法を、国立教育政策研究所の総括研究官、有元秀文さんが日本向けに再構成したもの。
 アニマドーラ(教師にあたる人)が絵本を読み聞かせることから始まる。「椅子や机のないところで、勉強でなく、遊びをしているような雰囲気づくりが大切」と、あくまで子どもを楽しませることに注意を払う。読み聞かせの後には、絵の切り抜きから登場人物の持ち物や服をあてさせたり、二度目の朗読でわざと間違えて読み、間違いを発見させたりと「集中して見る、聞く力を育てる」。
 また、抜き出した文章から元の物語を組み立てさせる手法もあり、文字の読めない幼児から小学生高学年まで、子どもに合わせてレベルの調整ができる。
 「これはあくまでも日本でのやり方。どうやってブラジル教育や日本語教育に取り込んでいくかは、先生方にお願いします」と向井さん。講演に訪れた、JICA本邦研修OB会の日本語教師やシニアボランティアたちは熱心にメモを取りながら、新たな教育手法を聞いていた。
 講演後には、実際にアニマシオンを体験するワークショップが開かれ、楽しさに笑いが絶えないひとときとなった。教師らは「少人数ならできそう」「簡単な絵本を探せばいいね」と、教育現場への取り入れを前向きに考えていた。
 向井さんは現在、国際協力機構(JICA)に務める傍ら、フリーアナウンサーとしても活躍中。「声を使う仕事、「本格的な読み」を活かしたいと朗読を続けている。「美しい日本語をブラジルに届けられれば」と二年連続、自費でブラジルを訪れている。
 参考文献=「子どもが必ず本好きになる16の方法・実践アニマシオン」有元秀文/合同出版/二〇〇五年。「読書へのアニマシオン入門」同/学習研究社/二〇〇二年。

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