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〃琉僑〃=日本との新しい関わり方=世界ウチナーンチュ大会の背景を探る《第1回》=世界の県系人が沖縄に=近づく5年に一度の祭典

2006年9月29日付け

 【沖縄発】五年に一度、世界中から沖縄県系人が母県に集まる祭典、「世界のウチナーンチュ大会」まで一カ月を切った。第四回を迎える今回は次世代育成を目標にすえ、さらなる海外県系人とのネットワーク拡大を目指す。他県に先駆け、世界の県系人の絆を強めようと独自の国際化施策を繰り広げる沖縄県。県人会と母県との関係、日系人と日本との絆に関してこのような試みは珍しい。大会実行委員会事務局を訪ね、今回にかける熱い意気込みを聞いた。また、全国の大学で唯一の「移民研究センター」を持つ琉球大学、地方自治体レベルでは珍しい移民展示をする南風原(はえばる)文化センターを訪ね、このような動きが起きた背景を探ってみた。(深沢正雪記者)

 「ハワイからはジャンボを二機チャーターして駆けつけてくるそうです」。同事務局の広報班長、多和田尚志さん(36)は嬉しい悲鳴をあげる。コーディネイターを務める平井雅さん(40)も「今回も海外からの参加者だけで四千人を超えそうです」と期待をふくらませている。
 十四日午後、近代的な県庁舎ビルの八階に設けられた実行委員会事務局を訪ねた。関係者がひっきりなしに出入りしており、緊迫した雰囲気が伝わってくる。
 大会本番は十月十二日から十五日までの四日間。世界約二〇カ国、国内外の約七〇団体から四四五三人のウチナーンチュが集結する。
 中南米からはブラジルの約四五〇人を先頭に七カ国、アメリカは三十六団体から約二七〇〇人が馳せ参じる。うちハワイ沖縄連合会が最多で八八一人。
 欧州からも仏、英、ドイツ、アフリカのザンビアからの参加もある。オーストラリアのシドニー、ニューカレドニアなどまさに世界規模だ。
 当日はワールド・ビジネス・フェア、平和ワーク「世界と沖縄」展、ゲートボールやサッカーなどの親善スポーツ大会など多彩な事業・イベントを始め、今年は特別にNHKのど自慢(十五日)も行われる。
 実行委員会スタッフは約二十人。中にはスペイン語や英語、ポ語要員や県系子孫、元留学生、本土からの近来移住者もいる。
 第一回大会(一九九〇年)ではブラジル勢の参加が最も多かった。なんと総員の三分の一に当たる七八八人が参加した。第二回は七一五人、第三回は四〇五人、今回は約四五〇人が予定されている。
 当初は、苦労した移民をねぎらうという意味合いの強いイベントだったため、ブラジルからは一世を中心に大挙して押しかけた。開会式もすべて日本語だけだった。
 海外からの参加者だけだった第一回の二三九七人に比較し、日本本土に散らばる沖縄県人会からも参加者を集めた第二回(九五年)には三五九三人(うち海外からは三四〇九人)、第三回(〇一年)には四三二五人(うち四〇二五人)だった。今回は四四五三人(うち三九二四人)の来沖が見込まれている。
 興味深いことに、まず海外への移住者が「世界のウチナーンチュ」という絆を確認し、それが第二回以降、本土への日本国内移住者に広がった。沖縄にとって、海外移住者は国内の先例となった。
 第二回には一八四人、第三回では三〇〇人、今回は十県から五二九人を予定する。行き先が国境を越えていようがいまいが、島から出た人間は等しく「世界のウチナーンチュ」なのだ。
 ブラジルの邦人社会は高齢化が進みつつあり、二世、三世らの参加が伸びないと参加増は難しい状況だ。
 ではなぜ北米だけ増加しているのか――。戦後、七二年まで続いた米軍統治時代と関係があるという。当時、多くの女性が米兵と婚姻した。「そのような花嫁がこの大会を機会に里帰りするケースが増えている」と事務局では分析している。
 意外なところで〃基地の島〃としての一面が顔を出す。世界にはいろいろな日系人がいる。
 一世が減り、世代交代が進む参加者を反映して、今回の開会式は日本語を含めて四カ国語(ポ語、英語、スペイン語)で行われる。
 郷土芸能に初めて触れる参加者が増えた。県系人としての誇りを持ってもらうため、本格的な琉球古典芸能鑑賞会、「琉球王朝・舞への誘い」、空手道・古武道交流祭なども行われる。
 多和田さんも「この大会に参加することにより、より鮮明にウチナーンチュというアイデンティティが感じられるようになるようだ」とし、一体感の高まり具合を説明した。
(つづく)

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