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JICAボランティア リレーエッセイ=最前線から=連載(63)=広内俊夫=パラグアイ日本人会連合会=「新たな日系社会の創造」

2006年10月12日(木)

 パラグアイ日系社会は今年、移住七十年を迎えました。九月八日には、日パ両国政府代表の下、盛大な記念祭が挙行され、来年五月には記念誌「(仮)パラグアイ移住七十年の旅」が刊行される予定です。
 記念誌編纂は文化創造活動であり、組織が出来ればそこに文化が生まれます。これを組織文化と呼びますが、積極的に文化を創り上げることにより、組織もよりよく機能します。編纂事務局での組織文化の創造活動の一端を紹介しましょう。
 現在、多くのボランティアに支えられて記念誌が創られており、歴史を語る人、歴史を綴る人、デザインする人、事務管理する人、統括する人の共同作業となります。
 このような多様な人々の集まりである組織では、どのように仕事を進めるかが大きな課題ですが、次の「ボランティア精神四か条」で仕事を進めています。
 「何をするかをはっきりさせ、全体を引っ張ること」「多少不安があっても、とにかく一歩前へ出ること」「まわりの仲間を信頼し、参加者を増やしていくこと」「そのうちみんながついてくると希望を持って進むこと」。この四か条は、個々人に勇気と希望を与えてくれます。
 しかし、組織はそれだけでは機能しません。人間関係を良くし仕事をしやすい環境を創り、仕事の成果を構成員全員で共有できることが重要です。これは組織文化を創り上げることに他なりません。
 そこで、事務局では出来上がった成果(記念誌の草稿)を随時壁に貼り、皆で確認しあい、また、一通り出来たところで冊子にまとめて関係者に配布し、目に見える形にして共有化を図ってきました。こうすることにより、チームワークも格段に良くなり、仕事も進みました。
 これらの活動は自然と事務局を訪れる外部の人々の目にもとまり、日系社会の多くの人たちに関心を持って貰えるようになり、協力者も増えました。写真、記事、意見等が届けられるようになり、記念誌完成を期待する人たちが多くなり、嬉しい限りです。
 新しいことは軌道に乗せるまでが大変です。このような組織文化の創造活動はボランティア活動の要です。この創造活動を日系社会全体に広めることは、新たな日系社会の創造に繋がります。
 「歴史を学ぶことは未来を語ること」。これはある歴史家の言葉ですが、私たちのスローガンでもあります。別の言葉で解釈すれば、「記念誌編纂は新しい日系社会を築くこと」ということになるのでしょうか。この記念誌がパラグアイ日系社会のバイブルとなることを祈りつつ――。

【職種】記念誌編纂   【出身地】神奈川県横浜市【年齢】59歳

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