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マンゴーで日系孤児を養育=フィリピン=農園収益で学園建設=島田理事長「日比の架け橋に」=広く出資を呼びかけ

2006年10月18日付け

 いろいろな日系人が世界にはおり、時代とともに、その数は確実に増えているようだ――。先月末に東京で行われた海外日系人大会で、フィリピンのジャフィール(日比)協会の島田栄理事長から興味深い活動報告が行われた。日系団体が「日本の尻拭い」のような事業を始めたという。
 年間、フィリピン人女性と結婚する日本人男性は六千組以上おり、内縁も含めた総数では十万組ともいわれる。八〇年代からダンサーなどの興行資格で入国し、日本人男性と恋愛関係になり、子どもを産むケースが増えている。
 幸福な婚姻も多いが、残念ながら、離婚して子供を連れて帰ってくる女性も多い。帰国しても仕事はなく、父親から生活費も送られない。事実上〃捨てられた〃混血児が、首都マニラ近郊だけで一万人、全土では数万人ともいわれる。
 「日本国籍をもった子供が結構いるので、それが非行に走るなどの社会問題が起きている」と島田さんは眉をしかめる。路上生活する子どもまで多く見られ、フィリピン社会から厳しい視線を浴びている。彼らもまた日系人には違いない。
 そんな孤児を収容する施設を作り、学問も身につけさせ、「やがては〃日比の架け橋〃になってほしい」と期待をふくらませる。
 マニラから北へ二百キロほど離れたところに二十四ヘクタールの土地を買って、マンゴー三万本を植えた農園「マンゴーの里・ジャフィール学園」を作る計画だ。その収益で孤児八十人を養育する。「日本語学校も作りたいと思っています」と胸を張る。
 〇二年にこのプロジェクトを立ち上げ、有志が出資しあって土地を購入した。今年ようやく三百五十本ほどのマンゴーに花が咲いた。「年末には実がなると期待しています」。収穫が増え利益が生まれたら、実際に孤児を引き取り始める。「あと二年はかかるでしょうね」と島田さん。
 始めた動機を問うと「誰もしないから私がやる」と力強く答えた。「いわば〃日本の尻拭い〃ですね」とたたみかけると、ほのかに笑みを浮かべた。
 この事業の資金は、有志が一口一万円を「マンゴーの里・出資基金」へ出資する形で集められた。一千人以上が協力しており、現在も出資者を募集中だ。詳しくはジャフィールのサイト(http://members.at.infoseek.co.jp/japhil/top01.html)まで。
 同協会の設立は一九八七年二月と、日系団体としては比較的新しい。会員の大半は日本人で、政界、財界、教育、宗教、法曹、マスコミ関係等多岐にわたっている。
 日本との関係において、地に足のついた活動をする日系団体が世界にはある。日本に援助や支援を求めるだけでなく、お互いのためになる新しいタイプの活動として注目されよう。

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