ホーム | 連載 | 2006年 | JICAボランティア リレーエッセイ=最前線から | ■JICAボランティア リレーエッセイ

■JICAボランティア リレーエッセイ

■コロニア
ニュース

■ブラジル
国内ニュース

■コラム

■企画

■会社案内

■リンク集

■トップページ

=最前線から
■連載(65)=竹村雅義=南マットグロッソ州日伯文化連合会=夕日が結ぶ家族の絆

2006年10月26日(木)

 こちらに赴任してから早いもので一年がたつ。そして、今年四月からは家族を呼び寄せ、一緒にブラジルでの生活を楽しんでいる。
 子供達にとっても初めてのブラジル、初めは不安な気持ちのほうが強かった。でも、この一年という時間は、私達家族にとって、かけがえのない時間になると信じている。特に、単身で生活してみて思ったことは、「やはりどんなことがあっても家族といっしょに暮らしたい」ということだった。
 特に、長男は日本に帰ると高校受験が待っている。でも親の願いとしては、「この一年という時間の中で、日本では経験のできない大切な宝物を探してほしい」と思っている。
 ここには、教科書はない人との出会い、異国の文化を知ること、外国語を肌で学ぶことなどがたくさんあると思う。
 そして、ブラジルから帰るとき、心から「楽しかった」と思えるようなそんな時間にしてほしいと願っている。
 もうまもなく、ブラジルは夏時間を迎える。この時期、でっかい地平線に落ちる夕日が特に美しい。いつだったか、山形で教えた子供が、日本海に落ちる夕日を見て、「ドラえもんの鈴のようだね」と私に教えてくれたことがある。
 子供の想像力は、大人とは違い自由なところがいいと思う。私にはそんな真似はできないが、このドウラードスの夕日も「ドラえもんの鈴」に負けないくらい素晴らしい。
 澄み切った青い空が刻一刻と茜色に変わり、静かに地平線に沈む姿は、いつまで眺めていても見飽きない。本当に悠久という言葉がぴったりする。赴任した当初も、何度この夕日に心慰められただろう。時代がどんなに変わろうと、この夕日は昔も今も変わらず、悠久の時を刻んでいる。
 そして、この地にたどり着いた移民の方達の心を慰めてくれたのも、この夕日だったという話を聞いた。不慣れな異国の地で見る夕日に、どんな思いを託したのだろう。夕日の向こうの先に、故郷の日本がある、そのことがきっと心の支えになったのではないだろうか。
 いま、約三十万人のブラジル日系人が出稼ぎとして日本に住んでいる。その数字を知ると、少し複雑な気持ちになる。この地に住む日系移民の家族も、出稼ぎとして日本に渡っている方が大勢いる。
 昔も今も、家族を思う気持ちは変わらない。できたら、日本で見る夕日が、家族の絆を結ぶ夕日であってほしい、と願わずにはいられない。
   ◎   ◎
【職種】日本語教育
【出身地】山形県山形市
【年齢】51歳
Copyright 2005Nikkey Shimbun (Jornal do Nikkey)
image_print