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JICAボランティア リレーエッセイ=最前線から=連載(71)=伊藤菊代=ビリグイ日伯文化協会=教育観の違いに驚嘆!?

2006年12月14日(木)

 ブラジルに日本語学校教師として赴任してから、もうすぐ二年が経つ。この二年の間、日本とブラジルの様々な違いを目の当たりにして来た。それも、つい子供や学校を比べてしまうのは、職業柄のせいだろうか。
 最近、いや今までで一番驚いたのが、生徒の一人が見せてくれたブラジル学校の修了式の写真だった。教室や廊下中に、大量の紙くずが散乱している。聞くとそれは生徒たちのノートなのだという。学校が終わり、景気祝い(?)にノートをビリビリに破いてしまったようだ。
 いくら勉強が終わったとは言えノートを破り捨てるなんて、信じられない。しかしこの惨状に、先生は厳しく叱ることもなかったようだし、何より写真に写っている生徒たちが何の悪気もなさそうに笑っている。日本の学校とのあまりの違いに唖然としてしまった。
 今でこそ、ブラジルのたいていのことには慣れたが、赴任当初は生徒たちの細かい点まで気になったものだ。例えば、鉛筆の持ち方がおかしいこと。よく爪を噛んでいること。貧乏ゆすりをするということ…。
 もし、ブラジルに来る前の私がこのような子供たちを見たら「ブラジルの教育はなっていない」と考えただろう。しかし、鉛筆の持ち方がおかしかったり、爪を噛んでいたりするのは、子供だけに限らず大人もなのだ。
 そんな光景を見ているうちに、ブラジルという国は、日本と違ってこういうことが教育の関心に上がらない国なのだろうと思うようになった。
 思うに、日本の価値観でばかり、ブラジルを判断しても埒が明かないのだ。「これがブラジルのお国柄」と割り切ってしまった方が、楽になることが多い。私自身、ブラジルに来たばかりの頃は生徒たちが「問題児」に見えていたのに、今では「手はかかるけれど無邪気な子たち」に印象が様変わりだ。
 それに、日本人が持ち合わせていない魅力をブラジルの人は持っているという側面もあるのだから、多少日本の感覚では眉をひそめてしまう事があっても、総合的に見たら問題は無いのかもしれない。
 ただ、ブラジルの人の考え方や行動の特徴を知れば知るほど、同じことをそのまま日本でしたら誤解されてしまわないか、と心配になる。
 もし、日本の修了式でノートを破って捨てようものなら、教師や学校に対する反抗的な態度だと見なされるだろう。ブラジルでは、問題にならないことであっても、日本の常識感覚に照らし合わせると「はしたない」「しつけがなっていない」「非常識だ」と思われてしまうことは、とても多いように思う。
 日本で理不尽な誤解をされるのを避ける為にも、日本に行く人には是非「日本ではしない方が良い事」を予備知識として持って行ってほしいと思う。
 また、在日ブラジル人が約三十万人にも上るとされる今、日本の人はもっとブラジルに関心を持ち、ブラジル人のことを理解していくべきだと思う。

【職種】日本語教師
【出身地】茨城県筑波郡
【年齢】27歳

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