ホーム | 連載 | 2006年 | JICAボランティア リレーエッセイ=最前線から | ■JICA青年ボランティア リレーエッセイ

■JICA青年ボランティア リレーエッセイ

■コロニア
ニュース

■ブラジル
国内ニュース

■コラム

■企画

■会社案内

■リンク集

■トップページ

=最前線から
■連載(56)=小笠原公衛=ブラジル日本移民史料館=変わったもの、変わらないもの

2006年8月24日(木)

 十八年ぶりのブラジルである。ひと月とちょっと経った。違和感はない。サンパウロ市内、リベルダーデ界隈の雑踏はあいかわらずで、抵抗なく身をおいた。が、ひとつだけ違っているものがある。
 車の種類の豊富なことだ。しかも新しい。あれほど圧倒的だったフスカも二台ほど見かけた程度。取っ払った助手席側からもぐりこむようにして中に入り、薄汚れた座席に尻を沈めると同時に紐をたぐってドアを閉めてくれる、あの古ぼけたタクシーはどこへ消えてしまったか。いまどき博物館にでも行かないとお目にかかれないのかもしれない。
 高性能の最新車が増えたせいだろう、こころもち大気汚染が改善された観がある(じつは最悪を覚悟してきた)。車による騒音もおなじ理由でうれしい誤算だった。
 さて、派遣先はブラジル日本移民史料館である。こちらは逆に様変わりしている。古巣だからといって、昔とったナントカというわけにはいかない。戸惑うことがいくつもある。まず、当時の職員はひとりもいない。共通語はポルトガル語だ。
 以前は日語にポ語が混じっていた。今はポ語に日語が混じって完全に逆転している。三階にある収蔵庫、事務所の配置も一変した。館長室や会議室は史料に埋まって事務所のスペースが半減しているが、それだけ史料が集まったということで嘆く筋合いではない。むしろたいへん喜ばしい。
 展示室の変化はもっと大きい。七階入口にあった「名物」の電気ウナギがいなくなった。入館者はいきなりの異形にドギモを抜かれたものだ。八階の特別展示室とマルチスクリーン室も収蔵庫と化し、錦鯉と牛車などがあった屋上取りこわされて、かわりに九階展示室が増設された(特展室の東郷青児の絵を移設)。
 着伯早々、県連主催の「日本祭り」があった。十万人を超えるにぎわいだった。文協も広いスペースが与えられていたが、見れば史料館の展示がコーナーのほとんどを占める。今後もコロニアの「看板」として史料館の存在は、ますますふくらんでいくだろう。
 その史料館に、夏休みの日本から来訪者が相次いでいる。貴重な移民史料をもとめてはるばる研究者がやってくるのだ。
 ところが、である。せっかく本なり新聞なり文書なりを手にしてもコピーができない。コピー機がないからだ。日本の人にはそのことが理解できない。事務所にそれがない以上に奇異に映るらしい(私もそのひとりだが)。
 ただし、事実は正確ではない。モノはちゃんと「有る」。古すぎて機能しないだけ。長い間使っているうちに自動的にというか、いながらにして史料館の収蔵物になってしまった。「フスカ状態」なのである。
 すみませんが、と通りのコピー屋さんでやってもらっている。不便このうえない。これによってどれだけ史料が傷んでいるかも定かではない…。
    ◎   ◎
【職種】史料館学芸員
【出身地】山梨県甲府市
【年齢】58歳
 ◇JICA青年ボランティア リレーエッセイ◇
連載(55)=沢田直子=ドミニカ日系人協会(ドミニカ共和国)=移住50周年を迎えて
連載(54)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=ブラジル再発見の旅
連載(53)=竹村雅義=南マットグロッソ州日伯文化連合会=オーパ!ブラジルの中のニッポン
連載(52)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=積み重ねられる歴史
連載(51)=豊倉麗子=アマンバイ日本人会(パラグアイ)=移住の歴史を後世に
連載(50)=大畑りつ子=コロンビア日系人協会(カリ)=一世から学んだ元気の秘訣
連載(49)=平安寺映美=エンカルナシオン日本人会=二つの言葉の間で
連載(48)=宇野麻美=ヴィトリア日系協会=「当たり」だった出会い
連載(47)=沢田直子=ドミニカ日系人協会(ドミニカ共和国)=カリブ海の日本語学校
連載(46)=岡本真樹=トカンチンス日伯文化協会(トカンチンス州)=トカンチンスのスター?!
連載(45)=名村優子=エステ日本人会(パラグアイ)=国境の町の学校
連載(44)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=みんなで楽しむ運動会
連載(43)=大畑りつ子=コロンビア日系人協会=コロンビアからコモ・エスタ?
連載(42)=加藤志保=ピエダーデ文化体育協会=「何とかなる」の精神
連載(41)=原規子=西部アマゾン日伯協会=浅黒い肌にしなる腰
連載(40)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=アマゾン加工食品の妙
連載(39)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツはははの一週間
連載(38)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「祖国」について思うこと
連載(37)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=「悔しい」気持ち
連載(36)=後田聡子=レシフェ日本文化協会 =いつかペルナンブカーナに
連載(35)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=子供と正直に向き合って
連載(34)=加藤志保=ピエダーデ文化体育協会=ブラジル―日本間で
連載(33)=今井さや香=コロニア・ピニヤール文化体育協会=村人の優しさに感動
連載(32)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=ブラジルのお盆
連載(31)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=ひらがなや漢字を描く?
連載(30)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=コロニアで聞く戦争体験
連載(29)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「サンタクルス病院にて」
連載(28)=辻 伸二=セルジッペ州日伯文化協会=歌と歩んだアラカジュの2年間
連載(27)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「アマゾンに暮らす」
連載(26)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=パラエンセのスピリット
連載(25)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=書道に日本語は必要?
連載(24)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=日本の反対側の日本
連載(23)=今井さや香=コロニアピニャール文化体育協会=「ブラジルの空の下で」
連載(22)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=気づいた「日本人らしさ」
連載(21)=山崎由加里=特別養護老人施設あけぼのホーム=〃家族とのつながり〃
連載(20)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=百周年に移民展を
JICA連載(19)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツから笑顔の風
JICA連載(18)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=「時の流れもお国柄」
JICA連載(17)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=パンタナールに漂う空間に出会って
JICA連載(16)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=料理アマゾナス風
JICA連載(15)=松岡美幸=パラナ州パルマス日伯文化体育協会=「人の温かみを感じる町」
JICA連載(14)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「何を残して何を持ち帰るのか」
JICA連載(13)=東 万梨花=トメアス総合農業協同組合=ブラジル人から学んだ逞しくなる秘訣
JICA連載(12)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「笑顔の高校生達」
JICA連載(11)=原 規子=西部アマゾン日伯協会=元気な西部アマゾン日伯協会
JICA連載(10)=中江由美=ポルトヴェーリョ日系クラブ=「熱帯の中で暮らし始めて」
JICA連載(9)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「日本」が仲立ちの出会い
JICA連載(8)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=日本が学ぶべきこと
JICA連載(7)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「気づかなかった素晴らしさ」
JICA連載(6)=清水祐子=パラナ老人福祉和順会=私の家族―39人の宝もの
JICA連載(5)=東 万梨花=ブラジル=トメアス総合農業共同組合=アマゾンの田舎
JICA連載(4)=相澤紀子=ブラジル=日本語センター=語り継がれる移民史を
JICA連載(3)=中村茂生=バストス日系文化体育協=よさこい節の聞こえる町で
JICA連載(2)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「きっかけに出会えた」
JICA連載(1)=関根 亮=リオ州日伯文化体育連盟=「日本が失ってしまった何か」
Copyright 2005Nikkey Shimbun (Jornal do Nikkey)
image_print

こちらの記事もどうぞ