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JICA青年ボランティア リレーエッセイ=最前線から =連載(31)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=ひらがなや漢字を描く?

2006年3月2日(木)

 「DESENHAR?」私の生徒たちにしてみれば、ひらがなを「かくこと」は「書く」ではなく「描く」だった。
 私の学校は日本語学校ではなく、ブラジルの義務教育を行っている学校。その中で日本語が必修科目となっている。何年間も日本語の授業が行われていたにも関わらず、文字はほとんど教えていなかったようだ。それで、今年から文字も勉強させましょうと提案したら、OKが出た。
 最初、名前を覚えさせようと考えた。まねて描くことから思い、一枚の紙に手本を書いて渡し、その下にコピーさせることにした。
 そうすると面白がって真剣に描いて入るものの書き順はグチャグチャ。二度目に書き順を示したプリントを準備したら、その書き順をあらわしている数字までコピーしてしまった。これは単に先生の準備そして、指導方法が間違っているとしかいいようがない。
 ひらがなを順番に教えていく中で、あ・か行がわかるようになっただけでも、いくつかの単語が読めるようになる。「いえ」「あか」「こえ」など…。
 私が黒板に書いて、「さあ、読んでみて」と言うと初めは嫌がっていた生徒たちも、答えられた達成感を一度味わったら、その後の勉強意欲はたいしたものになった。だが、全員をそのようにはさせられなかったのは、ちょっと悔しい。
 義務教育最終学年の八年生は、卒業したら日本語の勉強が終わってしまう。余程好きでない限り二度と勉強することはない。そこで何か思い出になるものをと考えて行ったのが習字。
 ひらがなの勉強を始めたばかりだとは思ったが、人気のある漢字を書かせることにした。「愛」「健康」「平和」「心」「星」どこでも、よく見かける馴染みのある漢字。
 この中から好きなものを選ばせて、ノートに何度も練習。習字の場合、書順が大切になるので徹底した。 本番。いざ、筆と墨を使わせて書いたら、まさに描くになってしまった。はねや払いのかすれを細く何度も書いていた。そしてまた、一文字書き終わるまで墨をつけてはいけないと教えていたら、白くかすれたところを塗っていた。「なにやってるのー!」と注意すると「PINTAR!」と答えが返ってきた。見ればわかるけど…。
 そんな生徒たちに囲まれて、新学期が始まった。人数も増えて、今年もどんな一年になるかが楽しみだ。
   ◎   ◎
【職種】日本語教師
【年齢】28歳
【出身地】福岡県宗像市

 ◇JICA青年ボランティア リレーエッセイ◇
連載(30)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=コロニアで聞く戦争体験
連載(29)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「サンタクルス病院にて」
連載(28)=辻 伸二=セルジッペ州日伯文化協会=歌と歩んだアラカジュの2年間
連載(27)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「アマゾンに暮らす」
連載(26)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=パラエンセのスピリット
連載(25)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=書道に日本語は必要?
連載(24)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=日本の反対側の日本
連載(23)=今井さや香=コロニアピニャール文化体育協会=「ブラジルの空の下で」
連載(22)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=気づいた「日本人らしさ」
連載(21)=山崎由加里=特別養護老人施設あけぼのホーム=〃家族とのつながり〃
連載(20)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=百周年に移民展を
JICA連載(19)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツから笑顔の風
JICA連載(18)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=「時の流れもお国柄」
JICA連載(17)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=パンタナールに漂う空間に出会って
JICA連載(16)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=料理アマゾナス風
JICA連載(15)=松岡美幸=パラナ州パルマス日伯文化体育協会=「人の温かみを感じる町」
JICA連載(14)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「何を残して何を持ち帰るのか」
JICA連載(13)=東 万梨花=トメアス総合農業協同組合=ブラジル人から学んだ逞しくなる秘訣
JICA連載(12)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「笑顔の高校生達」
JICA連載(11)=原 規子=西部アマゾン日伯協会=元気な西部アマゾン日伯協会
JICA連載(10)=中江由美=ポルトヴェーリョ日系クラブ=「熱帯の中で暮らし始めて」
JICA連載(9)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「日本」が仲立ちの出会い
JICA連載(8)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=日本が学ぶべきこと
JICA連載(7)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「気づかなかった素晴らしさ」
JICA連載(6)=清水祐子=パラナ老人福祉和順会=私の家族―39人の宝もの
JICA連載(5)=東 万梨花=ブラジル=トメアス総合農業共同組合=アマゾンの田舎
JICA連載(4)=相澤紀子=ブラジル=日本語センター=語り継がれる移民史を
JICA連載(3)=中村茂生=バストス日系文化体育協=よさこい節の聞こえる町で
JICA連載(2)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「きっかけに出会えた」
JICA連載(1)=関根 亮=リオ州日伯文化体育連盟=「日本が失ってしまった何か」
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