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=最前線から
■連載(60)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=今こそ拾え、移民の声

2006年9月22日(木)

 日本から届いた本にはさまっていた新刊紹介のしおりをみてびっくりした。大化の改新が実際にはなかったという説が発表されて本になっているらしいのだ。
 数年前、聖徳太子が実在しなかったという説を聞いて以来の驚きだ。間違いのない歴史などあるわけないのだけれど、こんな大物たちまでが存在すら疑われる事態になるとは。資料が少ない古代史であればこその話だろうか。
 この一年半、バストスの八十年史編纂のお手伝いをしてきたが、史料館の仕事としてやっているということもあって、とにかく徹底的に資料を集めておくつもりで取り組んできた。
 その集めた資料を駆使して、八十年目に解釈された「歴史」としての八十年史をしっかり書いてもらい、資料は保管しておいて次に歴史を書く将来のバストス市民や歴史研究者に引き継がなければならないと考えている。
 同じ資料を使っても歴史は幾通りにも語れる。とりあえずきちんとした資料がいいバランスで残っていればいい歴史研究ができるはずだと思う。いい歴史研究というものは、それがたとえブラジルの小さな一移住地の歴史であっても、人類全体に裨益する。大げさだが、そんな気持ちも持っている。
 当時の日本政府がかかわった移住地だったバストスには比較的文献資料が豊富に残っているが、今しかできない資料収集として時間をかけているのは聞き取り調査だ。
 それぞれに一応テーマを設定してお話をうかがうのだが、基本的には流れに逆らわずなんでも自由に話してもらうスタイルだ。もう一年以上やっているけれど、うまくできているかどうか自信はない。
 肝心なことをちっとも聞けていないインタヴューとして後世の歴史研究者の不評を買うのではないかと不安になることもしばしばだが、ここでひるんではいけないと続けているのは、たとえどんなに力量不足のインタヴュアーによるインタヴューであっても、何も残らないよりははるかに意味があると思うからだ。
 これまでに約六十人の方から協力を得た。これだけ残しておけば、将来畑中仙次郎が実在しなかった話にはまさかならないだろう。 こいう聞き取り調査を、全伯的にやったらどうかと思うのだけれどどんなものだろう。歴史資料を残すのだという気負いを持たず、何も残らないよりは、という気になればだれでもすぐに始められるものだと思う。
 たとえば各地にいい具合に散らばっているJICAのボランティアが、任期中にひとりでいいから話を聞いてまとめ、冊子にしてはどうだろうか。間違いなく相当貴重な移民史の資料になると思うのだが。
◎   ◎   【職種】史料館学芸員
【出身地】高知県高知市 【年齢】41歳
 ◇JICA青年ボランティア リレーエッセイ◇
連載(59)=長田優子=パラナバイ文化体育協会=「新世代の盆踊り」
連載(58)=山本自子=ブラジル日本文化協会(図書館)=二カ月で染まったブラジル
連載(57)=石塚弥依子=インダイアツーバ日伯文化体育協会=次の世代へ伝えていくもの

連載(56)=小笠原公衛=ブラジル日本移民史料館=変わったもの、変わらないもの
連載(55)=沢田直子=ドミニカ日系人協会(ドミニカ共和国)=移住50周年を迎えて

連載(54)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=ブラジル再発見の旅
連載(53)=竹村雅義=南マットグロッソ州日伯文化連合会=オーパ!ブラジルの中のニッポン
連載(52)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=積み重ねられる歴史
連載(51)=豊倉麗子=アマンバイ日本人会(パラグアイ)=移住の歴史を後世に
連載(50)=大畑りつ子=コロンビア日系人協会(カリ)=一世から学んだ元気の秘訣
連載(49)=平安寺映美=エンカルナシオン日本人会=二つの言葉の間で
連載(48)=宇野麻美=ヴィトリア日系協会=「当たり」だった出会い
連載(47)=沢田直子=ドミニカ日系人協会(ドミニカ共和国)=カリブ海の日本語学校
連載(46)=岡本真樹=トカンチンス日伯文化協会(トカンチンス州)=トカンチンスのスター?!
連載(45)=名村優子=エステ日本人会(パラグアイ)=国境の町の学校
連載(44)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=みんなで楽しむ運動会
連載(43)=大畑りつ子=コロンビア日系人協会=コロンビアからコモ・エスタ?
連載(42)=加藤志保=ピエダーデ文化体育協会=「何とかなる」の精神
連載(41)=原規子=西部アマゾン日伯協会=浅黒い肌にしなる腰
連載(40)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=アマゾン加工食品の妙
連載(39)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツはははの一週間
連載(38)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「祖国」について思うこと
連載(37)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=「悔しい」気持ち
連載(36)=後田聡子=レシフェ日本文化協会 =いつかペルナンブカーナに
連載(35)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=子供と正直に向き合って
連載(34)=加藤志保=ピエダーデ文化体育協会=ブラジル―日本間で
連載(33)=今井さや香=コロニア・ピニヤール文化体育協会=村人の優しさに感動
連載(32)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=ブラジルのお盆
連載(31)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=ひらがなや漢字を描く?
連載(30)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=コロニアで聞く戦争体験
連載(29)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「サンタクルス病院にて」
連載(28)=辻 伸二=セルジッペ州日伯文化協会=歌と歩んだアラカジュの2年間
連載(27)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「アマゾンに暮らす」
連載(26)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=パラエンセのスピリット
連載(25)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=書道に日本語は必要?
連載(24)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=日本の反対側の日本
連載(23)=今井さや香=コロニアピニャール文化体育協会=「ブラジルの空の下で」
連載(22)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=気づいた「日本人らしさ」
連載(21)=山崎由加里=特別養護老人施設あけぼのホーム=〃家族とのつながり〃
連載(20)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=百周年に移民展を
JICA連載(19)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツから笑顔の風
JICA連載(18)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=「時の流れもお国柄」
JICA連載(17)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=パンタナールに漂う空間に出会って
JICA連載(16)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=料理アマゾナス風
JICA連載(15)=松岡美幸=パラナ州パルマス日伯文化体育協会=「人の温かみを感じる町」
JICA連載(14)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「何を残して何を持ち帰るのか」
JICA連載(13)=東 万梨花=トメアス総合農業協同組合=ブラジル人から学んだ逞しくなる秘訣
JICA連載(12)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「笑顔の高校生達」
JICA連載(11)=原 規子=西部アマゾン日伯協会=元気な西部アマゾン日伯協会
JICA連載(10)=中江由美=ポルトヴェーリョ日系クラブ=「熱帯の中で暮らし始めて」
JICA連載(9)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「日本」が仲立ちの出会い
JICA連載(8)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=日本が学ぶべきこと
JICA連載(7)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「気づかなかった素晴らしさ」
JICA連載(6)=清水祐子=パラナ老人福祉和順会=私の家族―39人の宝もの
JICA連載(5)=東 万梨花=ブラジル=トメアス総合農業共同組合=アマゾンの田舎
JICA連載(4)=相澤紀子=ブラジル=日本語センター=語り継がれる移民史を
JICA連載(3)=中村茂生=バストス日系文化体育協=よさこい節の聞こえる町で
JICA連載(2)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「きっかけに出会えた」
JICA連載(1)=関根 亮=リオ州日伯文化体育連盟=「日本が失ってしまった何か」
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