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◇コラム 樹海

 日本の砕氷船「しらせ」が南極に向け東京・晴海ふ頭を出航した。今年は1956年1月に始まった南極観測隊から五十周年で意義も深い。当時の観測船「宗谷」は氷を壊す力が低く、旧ソ連から砕氷能力の高い船を借りた友情の一こまが話題になり、第1次隊は苦労が多かったけれども「昭和基地」をつくり観測の礎をしっかりと築いた▼南極観測では明治45年の白瀬 中尉が有名だが、帰国後の同中尉は探検費返済に困窮し不幸な晩年であったらしい。戦後も予算不足が続き苦しかった。それでも南極に置き去りにされた「ジロ」と「タろ」が生き延び奇跡の生還をしたときに国民は歓呼したものである。高倉健が主演した映画は爆発的な人気だったし、南極における隊員の活躍は庶民に大きな夢と物語を与え続けた▼日本観測隊の実績も大きい。有害な紫外線から地球を守るオゾン層に開く「オゾンホ―ル」を見つけた功績もその一つ。南極では大量の隕石が見つかっているが、特定の場所に集中するメカニズムに気づいたのも日本人だそうである。今年は氷床を3000メ―トルも掘り下げて72万年も昔の氷を手にした。一時、100万年前と報道されたが、再検査の結果72万年氷と解ったそうだ▼観測結果は一般には地味なものであり、南極知識の普及は簡単ではない。だが―日本隊は着実に成果を上げているし、これからも堅実な研究を続けてほしい。砕氷船「しらせ」の老朽化も指摘されるが、後継船は2009年に就航することが決まっている。あとは学術的な観測と新し話題に満ちた夢を語れる観測隊であって欲しい。     (遯)

2006/11/18

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