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「40年前の少女たち」舞台に=椎の実学園=合唱祭で恩師、教え子が感涙

2006年12月6日付け

 去る十月八日は、第四十回コロニア合唱祭の日だった。プログラム第一部椎の実学園の発表では少女部が舞台に上がるはずだった。ところが、半円に並んだ二十二、三人のメンバーは、四十五歳から五十五歳の女性ばかりであった。歌唱したのは、同学園少女コーラス部の第一期生だった。
 四十年前、コーラス部員はおよそ五十人、七歳から十二、三歳くらい。小野寺七郎教師が指導した。厳しかった。二、三時間立ち続けの練習はごく普通だった。倒れる部員もいた。
 その後、部員たちは社会人として、それぞれの道を歩んだ。「歌が自身の支え」の人もいた。歌を通して心のつながる友同士もいた。
 合唱祭での発表は、二百曲あまりのレパートリーのなかから選んだ。小野寺教師に「音楽は常に心の鏡だ」と教えられたことを思い出し、まず「山の組曲」を、さらに同教師作曲・岡崎親教師作詞の「南国の青空」。舞台の左側には、六三年から〇六年までの学園風景の写真百枚余がスクリーンいっぱいに映し出された。
 客席にいた小野寺教師の両眼に光るものがあった。声にならない声で、マイクに向かい、教え子たち一人ひとりの手を握った。歌った一人が述懐した。「先生の魂が、根性が、女性たちのなかに、四十年もの歳月、生き続けているのではないか。お金では買えない無形の財産だ。女性たちは、このかけがえのない心のプレゼントをそれぞれ、どこかで種としてなんらかの形で蒔いてくれるだろう」。

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