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コラム 樹海

2006年12月16日付け

 今、9月11日といえば、NY同時多発テロだが、我々は73年にチリで起きた軍事ク―デタ―を想い起す。陸軍司令官ピノチェト将軍がアジェンデ大統領を倒した軍事革命である。大統領府を砲撃し、アジェンデ大統領は自動小銃を持って抵抗する姿がTVで放映され若者らが興奮したのを覚えている。アジェンデは南米で初めての社会主義政権、しかも選挙による大統領であり国際的にも人気が高かった▼学生時代から社会主義者であり、政権を手にすると銅鉱山の国有化を実施するなど革新的な政策を次々に打ち出した。ところが、急激な社会主義化のためか国家財政は疲弊、外国資本が撤退し経済は苦しくなる。この苦境から脱しようと決起したのが軍部であり、ピノチェト将軍である。壊滅的な打撃を受けた経済を再建するために自由開放政策を採用し、瞬く間に「南米の優等生」と呼ばれるようになる▼この功績はもっと評価されていい。勿論、16年に及ぶ治世にはマイナスもある。その第一は、左翼と反体制派弾圧である。これで死亡、あるいは行方不明になったのは3000人を超すとされ、現在も反ピノチェト運動は続く。だが、陸軍病院で死去し遺体が一般公開されると7万人もの市民が弔問に押し寄せるという国民的な人気も高いのである▼晩年のピノチェト将軍は、革新系政府から刑事告発されたりし、かなり苦い思いをしたに違いない。遺体は荼毘に付し、国民の感情も真っ二つになっているので国葬は避けたらしく軍による葬儀となったのはいささか寂しい。が、ピノチェト将軍の名は末永く記憶したい。      (遯)

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