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グローバル戦略のパートナー=新日鉄=ウジミナスに出資拡大

2006年12月23日付け

 【既報関連】新日本製鉄は、国内二位の鉄鋼大手ウジミナス(株式会社ミナス・ジェライス製鉄所)への出資拡大を、二十一日に発表した。新日鉄は、ウジミナスへの出資比率(議決権ベース)を直接、間接合わせて、現在の五パーセント弱から年内にも一二・五パーセント超に引き上げて、単独で実質筆頭株主になる。現在、鉄鋼業界では世界規模での再編が進んでおり、新日鉄は、ウジミナスを傘下に収めて規模を拡大し再編に備える。ウジミナスでの勤務経験を持つ田尻慶一さん(国外就労者情報援護センター専務理事)は「ウジミナスと新日鉄との友好を象徴する喜ばしい出来事」とニュースを受け止めていた。
 ウジミナスは、新日鉄の技術協力を得て、一九五六年に設立。日本が、第二次世界大戦後、初めて海外に対する大規模投資を行った日本とブラジルの合弁会社だ。
 日本側四〇パーセント、ブラジル側六〇パーセントの出資で始まったが、国内のインフレの影響からか、その後、日本側が増資に応じられない時期が続く。ウジミナスは、九一年に国家財政負担の軽減を目的として民営化されるが、民営化直前には「日本側は十パーセントなかったんじゃないか」と田尻さんは振り返った。
 ウジミナスの、〇五年粗鋼生産量は八百六十六万トンで、南米三位を誇っている。
 これまで新日鉄は、日本側の投資窓口会社である日本ウジミナスの株を一五パーセント強保有していた。日本ウジミナスはウジミナスに二一・六パーセント出資しており、新日鉄は日本ウジミナスの第二位の大株主として、間接的にウジミナスに関与していた。
 今年十一月、新日鉄は一・七パーセントの議決権付きウジミナス株を初めて取得。ウジミナス設立以降続いてきた関係の中で、初めて同社に直接出資した。
 今月二十一日には、新日鉄は、ウジミナスの筆頭株主である日本ウジミナス株の出資比率を、五〇パーセント以上に高めることを発表。新日鉄は日本ウジミナスを連結子会社化し、間接的にウジミナスの経営権を握る。
 これらをもって、新日鉄は直接、間接合わせたウジミナスへの出資比率を五パーセント弱から一二・五パーセント超に引き上げ、実質の筆頭株主になる。日本経済新聞によれば、新日鉄は、社長指名権を含めたウジミナスの経営権を握る。
 株式取得費用については、守秘義務があるので正確な数字はわからないが、時事通信によれば数百億円になる見通しだ。
 鉄鋼業界では、中国やアジア地域の成長を受け、世界の鉄鋼生産、消費構造に大きな変化が生じつつある。
 原料である鉄鉱石業界と、最大顧客の自動車業界の国際な再編に続いて、鉄鋼業界でも集約化の動きが始まった。今年六月に世界第一位のミタル・スチール社が第二位のアルセロール社を買収。合併により年間粗鋼生産量が約一億一千万トンと、新日鉄の三倍超にあたる巨大企業が設立された経緯がある。
 新日鉄南米事務所マネージャーの川村公利さんは、今回のウジミナスへの出資を、ブラジルはじめ南米の成長可能性を見込んでものと説明。「グローバル戦略上の最も重要なパートナーのひとつとしてウジミナスがある」と話した。
 田尻さんは「(ウジミナスへの)最初の日本の指導はコロニアの協力があったからこそ。ウジミナスで覚えたことを後の人生に生かしている人もいるし、コロニア初めての重工業事業だった。両社の関係がより協力になったということだ」と喜んだ。

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