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ついに代理処罰始まる=必要書類が日本から到着

2006年12月27日付け

 一九九九年七月に浜松市内で落合敏雄さん=浜松市在住=の長女、高校二年生だった真弓さんが乗用車にひき逃げされて死亡した事件で、事件後、帰伯逃亡していたブラジル人ミルトン・ノボル・ヒガキ容疑者(28=当時)に対して、ブラジル刑法によって容疑者を裁判にかける「代理処罰」に必要な書類が二十二日に、日本側からサンパウロ州検察局に提出された。NHKが最初にこれを報じた。
 毎日新聞三月七日付けによれば、静岡県警はひき逃げなどの容疑で逮捕状を取り、容疑者の家族を通じて出頭を要請し続けたが応じないため今年三月、国際刑事警察機構(ICPO)を通して国際手配に踏み切っていた。
 〇七年七月に時効を迎えてしまうため、最優先で手続きが行われてきた。これを受け、サンパウロ州検察局では送られてきた証拠書類を読み、証拠能力が十分と判断された場合は、すぐにでもブラジル刑法により起訴される。
 ブラジリアの日本国大使館は「個別の案件に関しては答えられない」としながらも、「外務省としてはベストな方策を求めていく」と語り、ブラジルとの犯罪者引き渡し協定締結にかぎらない幅広い視野にたった、現実的な対応策を練る方向性を示唆した。
 ブラジル国憲法が自国民引き渡しを禁じているために、日本と同協定を結んでも実行されない可能性が以前から専門家によって指摘されている。
 伯日比較法学会の渡部和夫理事長は、今回初めて行われる代理処罰の課題点として、日本では一般的ではない陪審員制度である点や、日本から証人喚問する被告弁護側の権利が認められている点などの、日伯間での法整備のすり合わせが必要だという。
 また、代理処罰を簡便化するための司法共助協定案が九月、同学会からブラジル浜松協会に提出されていた。これを日本側専門家が審議し、年明けにも両国政府に提案していく方針だという。
 NHKによれば、今回、焼津で起きた母子三人殺害事件もこの代理処罰の枠組みでの対処が検討されるという。
 〇五年末時点で、八十六人のブラジル人が日本で犯罪を犯した後国外逃亡している現実があり、年々増加傾向にある。早急に何らかの対策を練らないと、百年祭を目の前に、二国間交流に水を差しかねないマイナス要因だ。
 いままで比較的静観してきたブラジル政府だが、これを機に本気で取り組む姿勢を見せることが期待されている。

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