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シェンさん尺八に魅せられて=日本と日本人を理解した=日本での修行12年=多彩な音楽活動=両陛下の御前でも演奏

2007年1月20日付け

 剣道着と大きな笠で、虚無僧の出で立ちを再現。流れるように透き通った尺八の音色と合わせ、演奏会場はパフォーマンスにくぎ付けになるー―。シェン・リベイロさん(46)の尺八の講演が十八日、北海道協会で行われた。シェンさんは、日本で、人間国宝の山口五郎氏(故人)から指導を受け、天皇皇后両陛下の夕食会でも演奏を披露した、尺八の名人だ。十二年間の日本滞在、三年間のポルトガル滞在を経て、二〇〇三年に帰国し、現在も日本とブラジルで多彩な音楽活動に従事。尺八のみならずフルート奏者としても一流の腕をもつシェンさんは、日本でブラジル伝統音楽ショーロを紹介しており、音楽を通じ、日伯交流のかけ橋となっている。
 シェンさんは現在、国内でレコーディングスタディオのディレクターを務める傍ら、尺八とフルートの公演に忙しい。昨年二、三月に開催されたモーツァルト・フェスティバルの際に、サンパウロ市立劇場でサンパウロ弦楽団とともに、フルートの演奏を披露している。今年三月には交流基金のプロジェクトとして、尺八の演奏を披露する予定だ。
 「尺八のもつ音の深さに惹かれた。人生の転換点だったと思う」。シェンさんは、サンパウロの音楽大学でフルートの勉強をしていた一九八三年、初めて尺八を聞いた。それから四年後、二十七歳で山口氏をたずねて日本へ渡った。
 「日本語がわからないし、尺八の音も出ない。正座だったし、最初の半年は最悪だったね」。家の入り方から、おじぎの習慣まであらゆることに気をつかう生活だったという。「少しずつ少しずつ尺八の音を楽しむ余裕が出てきた」。
 フルート演奏者として日本国内で音楽活動を展開しながら、山口氏のもとで尺八の腕を磨いた。国立劇場や天皇誕生日の明治神宮での演奏会に参加し、九九年には、皇居での夕食会に招かれ、両陛下の御前でも尺八の演奏を行った。
 「尺八は竹で作られていて、自然に近い。生きていて毎日調子が変わるから難しい」とシェンさん。「尺八の音の後ろ(背景)に、日本を見てたんだ」。尺八を習い、日本語を習得していく過程で、日本人の考え方もわかるようになり「好きになった」。最近では、尺八でボサノバのリズムを再現する〃尺八ボサノバ〃も行っている。
 「日本ではいろんなものをもらった。山口先生から『日本でもらった音を外国に伝えてくれ』と、いい言葉をもらったから、それを実現していきたい」。大学で講師をしないかという話があるものの「時間がなくて」。これからも、尺八の演奏家、フルート奏者、スタディオのディレクターなど、多彩な音楽活動に携わっていきたいと、抱負を語っていた。
 十八日の公演は、ふれあいセミナー(ブラジル日本語センター主催)向けに開催された。「ふるさと」「春の海」などが演奏され、日本語を学習している生徒ら百十二人が尺八の音色に耳を傾けた。
初めて尺八を聞いたというニコラス・ペラリン・サムエルさん(16)は「面白かった。将来、機会があったらやってみたい」と話していた。

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