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コラム 樹海

2007年1月24日付け

 昨年十二月、そのぶどうを一粒試食したとき、これで、日本人がまた新しい果物をブラジルに持ち込み栽培に成功した、と確信した。大粒のタネ無しぶどうであった。「藤稔」(FUJIMINORI)、「紅伊豆」(BENIIZU)など、いかにも美味しそうな名前がついていた▼JICA派遣の技術者の指導を受けて、いま、聖南西地域などの農家が生産に取り組んでいる。さきの二種のほか、十数種が「普及候補」に挙げられ、すでに一部出荷されている。好みの点でブラジル人にもうける、と確信がもてる水準に近い。指導技術者は、任期を延長して再渡伯するなど、熱の入れ方が違う。極く近い将来、必ず、ぶれない品質のものが恒常的に生産されるようになるだろう▼日本種のタネ無しぶどうは、甘いほかに適度の酸味がある。皮と実の離れ具合がいい。短気な人でも皮の処理でいらいらすることはない。粒が大きく、一つで二十グラムになる品種もある。見栄えがする。これらは、ブラジルでうける必須の条件であろうと思われる▼先日、高級シュラスカリアで、ソブレメーザに供されたのを見た。テーブルにふさわしいものだった。タネ無しにするための薬品(ジベレリン)処理がうまくいけば、多量生産の道は開けそうだ。それは、あるいは高級果物(卸値で在来ものの三倍余り)を指向する生産者たちの気持と相反するのかもしれない。消費者側としては、美味しいものがより廉価であればいい、と願っている。(神)

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