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初の国外犯処罰裁判=サンパウロ市=ヒガキ被告罪状認める=今後のモデルケースに

2007年2月7日付け

 日本で罪を犯して帰伯逃亡したブラジル人をブラジル刑法で裁く初の国外犯処罰裁判が六日午後一時五十分から、サンパウロ市南部のジャバクアラ裁判所で行われ、日本やブラジルのマスコミ十五社以上が取材に訪れた。九九年に静岡県浜松市で起きた女子高生死亡ひき逃げ事件で、事件後、帰伯逃亡した桧垣ミウトン・ノボル容疑者(31)は罪状を大筋で認め、二十五分にわたって行われた裁判後に記者会見を行った。後に続く国外犯処罰裁判の先駆けとして注目を集めそうだ。
 同日昼前から日本テレビ、フジテレビ、TBS、テレビ朝日の主要四局の取材班が北米ニューヨーク支局などから駆けつけたほか、NHK、朝日新聞、日本経済新聞、読売新聞、共同通信、時事通信の南米特派員も押しかけ、取材合戦を繰り広げた。
 通常は四席しかない傍聴席を臨時に十三席に増やすなど裁判所も対応。傍聴席に入りきれない取材陣は廊下で待機、ブラジル静岡県人会の鈴木幸男事務局長は、「今回はご遺族の方が来られなかったが、来たときはできるだけの応対をしたい」と話した。
 まずアントーニオ・アウバロ・カステーロ裁判官が起訴状の内容を読み上げ、いくつかの項目を質問。桧垣容疑者はひき逃げ事実を大筋で認めたが、「速度や場所は分からない」とした。
 今回のヒガキ被告の新証言をもとに、日本側のさらに詳しい証言を得たうえで、次の公判が行われる予定。
 元サンパウロ州高等裁判事、伯日比較法学会の渡部和夫理事長によれば、パラグアイやアルゼンチンでブラジル人が犯した犯罪を国内処罰した判例はあるが、日本は初めて。
 「今回、日本での犯罪の国外犯処罰が始まったことにより、ブラジルに逃げ帰っても処罰を免れられないという強いメッセージになる」と語り、日本国内で「逃げ得」意識が広まることを防ぐ意義を説明する。
 加えて、「帰ってくれば処罰を免れるというイメージは、ブラジルにとっても良くない。ここはそういう国ではない」と強調した。
 今回は初公判だけに、今後続々と申請されるであろう事件のモデルケースとしても注目を集めそうだ。
(編集部注=代理処罰より「国外犯処罰」の方が適当との渡部理事長の指摘により、今後の表記はこちらに統一する)

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