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■記者の目■=理事会選挙の行方は?

2007年4月3日付け

 午後三時、選挙管理委員会のミナミ・イサオ委員により、当選立候補者名が得票順に読み上げられた。
 現体制強し――。総会会場となった文協小講堂のあちこちで、安堵と落胆のため息がもれた。
 上原体制の続投を支援するとされる立候補者は、六十五人が当選。これは五十四人を過半数とする理事会選挙を制するに十分な数だ。
 そのなかの五人の当選者は「しんせい―」にも名を連ねているが、GAS優勢には変わりない。なお、六人の永年評議員は現体制寄りの立場を取っていることから、七割が体制派とも言える。
 「しんせい―」の中心メンバーで今回当選したのは、谷広海(四十一位)、中沢宏一(六十三位)、小山昭朗(九十位)の各氏。
 「もう数票あれば」―。一票が明暗を分けるほどの接戦。羽田宗義(百三位)、北川彰久(百四位)、山川健一(百六位)の各氏はもう一歩のところで涙を飲んだ。
 なお、今回の結果を現体制への評価とする見方をするなら、関根隆範(百九位)、杓田美代子(百四十五位)、結城ルイス(二百十八位)の三副会長が落選したことも指摘すべきだろう。なお、二十位につけた渡部和夫氏の知名度と存在感にも注目したい。
 一方、自派の公認を公表しなかった小川氏。険しい表情で当選発表に耳を傾けた。「(自派から)二十五人以上が当選した。勝負はこれから」と取材記者に話し、「しんせい―」グループに歩み寄り、健闘を称えた。
 公の場所で初となる両派の対面は、これからの選挙戦の行方を暗示するかのようだ。
 選挙前、三者が三割ずつの候補者を送り込めば、「上原・しんせい」もしくは前回同様、最終的に「上原・小川」という可能性も予測されていたが、得票数から見て、現体制派が他派の票に頼る必要はなくなったと見ていい。
 つまり、現体制派は独自のシャッパで三期目続行を目論む可能性が高い。
 「しんせい―」が設立趣旨通り、〃一世の意見を文協運営に反映〃させたいならば、現状は厳しい。
 GAS評議員が六割を占め、一世が三割未満という現状から見て、理事会参入以外に趣旨を貫徹し、会員の期待に応えることは難しい。
 となれば、理事会選挙への出馬を決めている小川氏との連立の可能性も高まってくる。両派の当選者に加え、体制派の切り崩しを図れば、過半数を奪取することは不可能ではない。
 なお、GASが発表している公認当選者は本人が承諾していないとの情報もある。三者が主張する当選者数が百二十五を超えることがそれを裏づけている。
 「しんせい―」、小川両派がそれぞれに取り込みを図ったうえで、「しんせい―」がシャッパを提出、過半数を割らせることで決選投票に持ち込むことも戦略的には可能だ。
 ともあれ、これから注目が集まるのは、十八日のシャッパ締め切り期日までの両派の動きといえるだろう。
 合従連衡はあるか――。百周年の前夜祭といえる今回の文協選挙からはまだまだ目が離せそうにない。
         (剛)

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