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コラム 樹海

2007年4月11日付け

 昨年リオ・グランデ・ド・スル州で日本人が入植して五十周年の祭典が行われた。戦後移住五十周年ということである。同州とアルゼンチン国境に近いところに、一九五七年、ジュスチーナ移住地が開設され、十四家族、九十七人が入植、一年後に、将来の見通しが立たない、と判断されたことから、全家族が離散した。一年という〃短命〃であったせいか、五十周年の祭典記録のなかに、ジュスチーナの名は、まったく現れなかった▼入植者の一人で家長ではなかったが、当時二十八歳と成人していた吉村隆さん(ビリチーバ・ミリン在住)が、五十周年を機にせめて入植者だけの親睦会でもできれば、とさきごろ本紙などを通じ、連絡を呼びかけた。結果は、反応皆無▼入植者のほとんどが山口県出身者だったことから、県人会を通じて、昔の〃同士〃を捜してみた。一人だけ見つかった。六十歳、当時十歳の少年だった人だ▼実は、吉村さんは失望した。元少年と「懐かしいという感情」を共有できなかったからである。もちろん、元少年のせいではない。「五十年という歳月は長いですねぇ」としか言いようがなかった▼ジュスチーナ入植時、四十歳代だった元家長たちはほとんど他界しているとみていい。当時の長男、長女にあたる子供たちが六十歳代、それが現実である。移住地が一年で消えてしまったのも、親睦会が成り立たない大きな理由だが、もうひとつは世代差、これが大きな理由だと納得したようだ。(神)

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