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コラム 樹海

2007年4月26日付け

 JICAは一世が死に絶えるのをじっくり待ちながら、支援を打ち切ろうと考えているのか。世界がこれだけ移民政策で揺れているのに、日本国内には過去も現在も、移民問題など存在しないと思っている証左ではないか▼世界の日系人口は約二百五十万人であり、うち約百五十万人がブラジル日系人だ。その七割はサンパウロ州在住であり、JICAサンパウロ市支所を縮小閉鎖させることは、日系社会との最大の絆を断ち切ろうとしている訳だ▼いざそうなった後で、何かあっても首都まで相談に行くのは遠い。自然と足は遠のく。JICAにしても日系社会の動向は掴みづらくなる。ブラジル政府との交渉だけしていればいいと考えるから、そうなるのだろうか▼奇しくも緒方理事長は今回の会見で、「今回は現場が見られなかった。アマゾンなどに行きたかったが日程がとれなかった」との心情を吐露した。かつて理事長がクルド難民を救済するためにイラクの現場を歩き回った姿は、今回同胞らに対して見られなかった▼日系社会側にも責任はある。二十二日のサンパウロ市での日系五団体代表との会合では、サンパウロ市支所閉鎖の瀬戸際との切迫感をもって、日系社会との絆切りに抗議したのか▼ブラジルへの移住事業費は二億五千万円程度しかない。日本なら橋一本かけられない金額だろう。金額は驚くほど少なかった▼国策移住の結果として現在の二世らの訪日就労がある。ブラジル国籍かもしれないが、日本が国策で行った移住事業の成果として生まれた。まったく関係ないとどうしていえるか。(深)

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