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コラム 樹海

2007年6月16日付け

 世の中には「おかしな話」がいっぱいある。武村正義元蔵相の長男は「父の存在が重い」とかで麻薬に走り実刑の判決だし、朝日新聞社長の息子も、これまた覚せい剤だかの愛用でこちらも有罪だった。緒方重威元公安調査庁長官が朝鮮総連本部の建物と土地を35億円ほどでポンと買おうとしたのも不思議千万である。緒方氏は広島高検の検事長を歴任した人物で公安が専門だった▼調査庁の頃は「朝鮮総連の裏も表も知り尽くしている」とされ、総連が北朝鮮の暗部の仕事を担当した闇にも通じていたはずである。日本人拉致という政治的な難問もあるし、北朝鮮系の16信用組合は総連への架空融資が積み重なって経営破綻した。この建て直しのために日本政府の資金が投入され、整理機構は630億円の返還を求めて総連を提訴し、判決は18日に迫っている。その直前の売買であり、元長官は「一点の曇りも無い」と語るけれども、これは「おかしい」▼もし判決で総連が負ければ、本部建物は差し押さえの可能性があるし、総連の苦衷は解る。従って、それを回避するための売却なのは明らかではないか。さすがに―東京地検特捜部は素早い。「虚偽売買」の疑いで緒方元長官の自宅などを捜索し、この一件を緒方氏に持ち込んだ土屋公献元日弁連会長からも事情聴取している。今後どうなるかは難しいが、来週の判決が一つの目安になる▼首相は売却の話に不快感を示し政官界からの批判も多い。検事や役人を辞めたので「なんでもあり」なんて申し開きは通りませんよ。と、元長官であり広島高検検事長の緒方氏にお告げしたい。     (遯)

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