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コラム 樹海

2007年8月3日付け

  戦前、日本人入植地では自分の家より先に学校を建てた――随分聞かされた話である。子供移民(準二世)たちが、いま日本語を読み書き、話すことができるのもそのお陰だ、と準二世自身の口から直に聞くと、妙に説得力がある▼コロニアでよくものを書いているそうした一人が、さきごろ四冊目の随筆集(日本語版)を自費出版した。三歳で渡航した人である。人に読んでもらえる文章を書くことができるのも、父親たちの子弟教育にかけた情熱の賜物というわけだ▼この人は、ブラジルで約八十年生きてきた。だから百年のコロニアの歴史の八〇%を見てきた、などと言う。持論は「日本の伝統文化を子孫に語り伝えたい」である。伝統文化の一つが「子弟の教育を最も肝要と考えること」。親たちは、昔、三十人も集まれば、何よりもまず公の為(な)すべきこととして学校を建てた、と力説する▼ちょっと表現はきついが、親たちの大半は、いわゆる学がなかった、にもかかわらずピンガに費用を割くのを我慢して学校建設におカネを使った、と明快である▼昔の一世は、すぐ帰国するつもりでいたから、子供に日本語をおぼえさせておこうと学校を作った、という一面はある。ひるがえって、現代の学校出のデカセギたちも、おカネを稼いだら帰国しようとしているのに、自分たちの手だけでポ語学校をつくるのは極めて困難な状況である。時代が忙しく動く中で、「子弟教育第一」という伝統文化を〃移住した〃日本で実践する道は険しい。(神)

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