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下元健吉胸像が盗難被害に=コチア市=没後50周年のミサ目前=フェラース理事長の胸像も=「それでも式典はやる」

ニッケイ新聞 2007年9月20日付け

 「まさか盗まれるなんて」――。先週末、サンパウロ州コチア市内にある高知県伊野市との姉妹都市友好庭園広場内に建立されている、日系農業界の大恩人とも言える二人の胸像が盗まれる事件が起きていた。盗難にあったのは「下元健吉胸像」と「フェラース理事長胸像」。二十二日に毎年恒例の元コチア組合関係先亡者の慰霊ミサを予定していた矢先の出来事だけに、関係者らは戸惑いを隠せない。コチア青年連絡協議会(山下治会長)ら主催三団体は、胸像がなくても慰霊ミサを実施することを決定。山下会長は「ミサの時にみんなが集まるので、具体的な対処や対策を話し合いたい」としている。
 盗難に気付いたのは、毎年慰霊ミサの世話をしているコチア市職員の上村ジョージさん。十七日に旧友会に連絡が入った。
 南米最大の農協だったコチア産組の創立者の下元健吉氏と、第二次大戦中に就任して同産組を政府の接収から守ったフェラース理事長の両胸像は、まさに恩人中の恩人の像であり、日系農業界の〃宝〃でもある。
 二つの胸像は〇二年七月に同公園に設置されており、共に青銅製で約三十キロ。約一メートル五十センチほどの御影石の台座に、親指大ほどのネジ二本のみで止められていたようだ。
 関係者によると、一つは台座から剥ぎ取られたようになっていて、もう一方は外されている。一般家庭にあるネジ回しで充分外すことが可能だったいう。
 実は、ミサの期日を十五日と勘違いした山下会長が同地を訪れ、胸像がないことに気付いていたが、「どこかに保管しているのだろう」と気に止めなかったという。このことから、十四日以前に持ち去られていたことが判明している。
 同公園内の警備を担当するのは市役所の管理人が午後五時まで、夜警は午後七時からとなっている。その間の無人状態に犯行が行なわれた公算が強いという。
 同協議会の村田重幸書記は、「二十四時間体制で警備している(と思っていた)から安心しきっていた」と悔しそうに話す。すでに被害届けは提出したが、管理人に詳しい状況を尋ねても「私は知らない。市役所に聞いてくれ」との一点張りの状態だという。
 関係者は、青銅はキロ当たり比較的高値で取引されることから、故買商に売るために狙われたのではと推測している。
 今回の慰霊ミサでは、市内の教会でミサを行った後、「下元健吉胸像」への献花が予定されていた。
 困った主催側では同じ市内にある、産業開発青年隊が〇六年六月にサンパウロ州立ケンキチ・シモモト学校に設置した下元健吉像に献花することに決定。同公園には献花を欠かせないコチア青年先没慰霊碑もあるので、二カ所で行うことになった。
 山下会長は「節目の五十周年忌を直前に、非常に残念だ。それでもミサはやります。みなさん、ぜひ来てください」と呼びかけた。
 慰霊ミサの主催団体はコチア組合清算委員会、コチア青年連絡協議会、コチア旧友会。二十二日午前十時からコチア市のサント・アントニオ・デ・ポルトン教会(Rua Jorge Caichi Praca Portao Cidade Cotia SP)で行われる。

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