ニッケイ新聞 2007年11月06日付け
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十一月五日】ベネズエラのチャヴェス大統領が同国の軍事力強化を図っていることで国防省は四日、軍事費予算を六九億レアルから九一億レアルへ増額要求する意向であることを明らかにした。ブラジルの軍装備は、実戦に使える状態ではないという。ベネズエラの軍備強化は地域の軍事的均衡を崩す懸念があることで、ブラジルも国家主権を示威するため軍事力の裏付けが必要という見方が台頭してきた。
ベネズエラの軍事力強化に対する潜在的懸念は前からあったが、緊急課題となったのは初めて。国防省からブラジル軍の戦略的弱勢を指摘され、ルーラ大統領は装備の更新に言及した。空軍は所持する航空機の四〇%が、飛べる状態にないという。海軍は、交戦力ゼロと白状した。
中南米で一体、何が起きているのか。ベネズエラの軍事力強化を前に軍高官は、一九八五年に軍政が終って以来、一国の軍として専制批判だけでパトロールも満足にできないことを遺憾とした。これは歴史の皮肉としか、いい様がないと軍高官は述懐する。
軍政終焉の結果は、現実となっている。弱体化した軍への予算増額と戦略志向は、いままで言い出せずにモヤモヤしていた。それが来年度軍事予算の二二億レアル増額で、軍の動きが具体化し始めた。空軍は、六億レアルで軍用ヘリを独自に購入するらしい。
ロシア製のMi35M攻撃用ヘリとMi171輸送用ヘリをフルラン前産業開発相が、ブロイラーの輸出代金で決済する予定であった。同機は同相の引退で、ベネズエラへ取られた。
ブラジルの海域をパトロールする偵察機は現在八機あるが、飛んでいるだけで不審機の追跡など思いも寄らない。フルラン前開発相が居ないいま、ロシアとブロイラーの物々交換による軍用機購入は、米政府の手前がはばかれる。
軍部の動きで呼応するように下院科学技術委員会が二十九日、核と国産戦闘機の開発で一〇億レアルの予算要求を複数年計画で決めた。サイトウ空相が、近代戦は制空権で決まると持論を述べる。しかし、ブラジルの空軍力は、南米で四番目でしかないと嘆く。