ホーム | 日系社会ニュース | 文協シネマ=「0からの風」に5百人=ブラジルでの再上映に期待

文協シネマ=「0からの風」に5百人=ブラジルでの再上映に期待

ニッケイ新聞 2007年11月08日付け

 文協の水曜シネマで十月三十一日、サンパウロ国際映画祭招待作品「0(ゼロ)からの風」が特別上映され、異例の五百人が来場、多くの感動を呼んだ。
 塩屋俊監督は舞台挨拶で映画化のきっかけなどを話し、「子供を大事に思う親の気持ちを確認できる映画にしたかった」と思いを語った。
 映画のモデルとなった鈴木共子さんは「ここで話しているのが不思議な気持ち。サンパウロに来れたのも息子のおかげ」と深く頭を下げた。
 一人息子を交通事故で亡くしたことから、三十七万もの署名を集め、法改正を成し遂げただけでなく、「息子の人生を代わりに生きる」ため、早稲田大学に入学。現在、「命のメッセージ展」などの活動を行う鈴木さんを演じる女優田中好子の名演に目頭を押さえる来場者の姿もあった。
 五年前に実兄を交通事故で亡くしたという隈下英子さん(76)は、「強く生きている姿に感動した」とニッケイ新聞の取材に答えた。
 「最後まで犯人を許さないというのは、鈴木さん本人も辛いのではないか」と渡辺州海枝さん(81)に対し、「気持ちは分かる」と娘のミチさん(55)。
 NHKで鈴木さんの活動を知っていたという二人は、「母親の愛の力。素晴らしかった」と親子で声を揃えた。
 上映後、鈴木さんは、観客からの抱擁や優しい言葉を受け、「感動した」と笑顔を見せた。
 塩屋監督は、アメリカや韓国での上映を控えていることを明かし、「事件を忘れさせない、生き残っていける作品にしたい」と力を込め、「若者に見せていく」ことをこれからの課題に、ブラジルでの再上映への期待も残した。

image_print