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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2007年11月13日付け

 日本で最も人口が少ない県は?と訊かれて「鳥取」と、即座に答えられる移民は極めて少ないのではあるまいか。先の調査で「60万人割れ」が明らかになり県庁のお役人も「頭が痛い」とぼやいているそうだ。子供の頃に風呂に入りながら「因幡の白兎」を耳にし「嘘はいけません」と「大国主神のありがたさを」を教えられたし、砂丘の美しさも話して呉れた▼あの地方は出雲大社の文化・文明に入るのだろうから、古くは蹈鞴(たたら)製鉄も行われたろうし、大山の麓にある妻木晩田遺跡もある。紀元1―2世紀の弥生時代のもので竪穴住居が400棟、掘立て柱建物が500棟。それに墳墓もある大きな遺跡である。恐らく―神話にあるような昔は、かなり高い文化を誇ったし、もしかすると韓国や大陸との交流も盛んだったのかもしれない▼江戸時代には、北海道と大阪を結ぶ北前船が寄航したろうし、それなりに繁栄したのだろうが、明治になると政治経済の主力は太平洋岸に移り衰えが目立つようになる。裏日本と呼ばれ、伝統的な工芸らを除けば産業も遅れる。こうした悪条件が重なっての人口減なのだろうが、これは鳥取県に限ったことではなく、あの一帯が抱える大きな悩みだ▼それでも県知事はいるし、県庁もある。しかも、都民1270万人の巨大都市・東京の知事と権限の差はあまりない。予算も東京は13兆3千億円、鳥取は4、118億円である。大阪府の人口は神奈川県に負けて全国の3位に転落。と―列島の動きは激しい。こんな難しさを解決するためにも討議が進む「道州制」の導入をもっと急ぐぎべきなのかもしれない。(遯)

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