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〃出張〃文協コンサート、レジストロで成功=美しい自然に囲まれた=文化活動に熱心な町=ピアニスト矢崎愛さん=聴衆に極めて接近

ニッケイ新聞 2007年11月22日付け

 【レジストロ】水を打ったような静けさの中を、魔法のような指が鍵盤を舞う。十七日夜、レジストロの市立多目的ホールでブラジル日本文化福祉協会(上原幸啓会長)主催の第三十五回文協コンサートが催された。ピアノの魔術師は矢崎愛さん。矢崎さんは、演奏だけでなく、曲目の解説もていねいに行い、いいマナーで盛んな拍手を贈った聴衆に応えた。
 満席となった多目的ホールの約二百五十人の聴衆を前に、矢崎さんはエルネスト・ナザレーの曲を三曲、ヴィラ・ローボスの曲を二曲、日本の曲を三曲(ピアノによるお江戸日本橋、赤とんぼ変奏曲、さくらさくらによるファンタジー)シャブリエの曲を一曲、ショパンの曲を四曲、計十三曲を演奏し、アンコールに応えてもう一曲披露した。
 矢崎さんは二、三曲演奏する前にその曲の説明をし、一曲弾き終わるたびに立ち上がり、笑顔で観衆の拍手に応えた。観衆は異口同音に矢崎さんの演奏の素晴らしさを称えた。
 観衆の中には、その日サンパウロの音楽大学で審査をした後、矢崎さんのコンサートに駆けつけた師、シロ・ゴンサルヴェス・ジアス・ジュニオール教授の姿があった。
 矢崎愛さんは「音楽を通じて色々な人に出会い、演奏しているとき、その人たちと同じ空間にいて一緒に旅をしているような感覚に襲われます。それは私にとって大きな喜びです。悲しいときも嬉しいときも音楽は私を励ましてくれます。レジストロの聴衆の皆さんはマナーが良く、気持ち良く演奏することが出来ました。この前、世界的に有名なピアニスト、ジョン・カルロス・マルチンスさんがこの町で演奏されたと伺っております。レジストロが文化活動に力を入れていることを感じました。きょうのコンサートの会場から望む、リベイラ川の眺めから美しい自然に囲まれたレジストロを知りました」と語った。
 同日の午後四時半には、レジストロ市のプロジェクト「グリ」の子供たち約百人を前に六曲演奏した。矢崎さんは子供たちに「日本人は物事に厳しく几帳面、ブラジル人は明るく、開放的で活動的。でも私は、両方好き」と言って、桜の花や日本の季節について分かりやすく説明した。
 プロジェット「グリ」の子供たちはギター、バイオリン、コーラスを習っている。生徒の一人は「私はピアノのコンサートは初めてですが、矢崎さんのピアノは素晴らしくとても感動しまた」と語っていた。
 今回のコンサートは多くの企業およびレジストロ文協、レジストロ市役所の後援で行われ、サンパウロの文協の理事、本多ジュリアさんを始め、山川健一さん夫妻、羽田宗義さん、西銘光男さん、矢崎さんの夫、草村芳哉さんほか数人がマイクロ・バスで同行した。
 入場者が持参した食料品はレジストロ市の社会福祉施設、CRIFF保育園、AME少年少女養育園に寄贈された。
 矢崎さんは、新潟市(旧豊栄市)に生まれ。五歳からピアノを始め一九九六年、十八歳のときブラジルに渡り、サンパウロの「トン・ジョビン音楽学校」に学んだ。国際的に有名なピアニスト、シロ・ゴンサルヴェス・ジアス・ジュニオール氏に師事している。(金子国栄さん通信)

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