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ポンペイア=西村農工学校で卒業式=母親に花を、31人旅立ち=辛かった3年の日々=思い馳せ抱き合い涙流す

ニッケイ新聞 2007年12月7日付け

 西村農工学校(西村ジョージ校長、ポンペイア)の第二十四回卒業式が、一日午後七時から、同校内の体育館で行われ、約六百人の関係者が祝いに詰め掛けた。今月八日に九十八歳の誕生日を迎える西村俊治代表も元気に姿を現し、卒業生を祝福した。卒業生らは三年間の思い出を胸に秘めながら卒業証書を受取り、喜びを爆発させた。退場時には、会場の後方に集まり肩を抱き合って、涙を流しながらお互いを称えあった。
 卒業式開始とともに、壇上へまっすぐ伸びた赤い絨毯の上を、揃いのスーツに身を包んだ卒業生が母親の手を引きながら入場してきた。一輪の花を手渡し、母親を抱擁し自分の席へと向かっていった。
 ジェラルド・アルキミン元サンパウロ州知事、丸橋次郎サンパウロ総領事館首席領事、秋山利良元八ヶ岳中央農業実践大学校校長らが来賓者として紹介された。その他には松尾治県連会長、吉岡黎明救済会会長らがサンパウロ市から足を運んだ。
 スティーブ・クニヒロ教員から「非常に辛い三年間を過ごした三十一人に心からお祝いを述べたい。今日の日を迎えたことを嬉しく思う」と、お祝いのメッセージを送った。
 今年の卒業生は三十一人。入学当初は四十七人だった。今回の卒業生で最も遠いところから来ていたのは、約二千五百キロ離れたパラ州シングアラ市出身のラファエル・タヴェイラ・デ・アドラーデさん(18)だ。
 ラファエルさんは生徒代表として壇上に立ち、一年ごとに三年間をふりかえった。それぞれが地方から集まって来ていたために、まとまりが大変だったことや、両親の元から離れての寄宿舎生活、毎日の農作業と勉学など楽しかったことや、苦しかったことを思い出し「長く辛かった三年間はあっという間に過ぎてしまった。友人、家族、学校の関係者に感謝を述べたいです」と喜びに満ちた顔で話した。
 西村校長から一人一人の名前が読み上げられ、西村代表とアルキミン元サンパウロ州知事から受取った卒業証書が入った筒を胸に当てたり、ガッツポーズをしたりして、喜びを爆発させていた。会場からは万雷の拍手が浴びせられた。
 学校の友人、教員や職員らが選んだ、「最優秀学生賞」と「友人からもっとも好かれたことを称える賞」を受章したラファエルさんは、「名前が呼ばれた時に母はうれし泣きをしていた。まさか選ばれるなんて思っていなかったので嬉しかった」と満面の笑みで語った。
 その他には「勉学と課題に努力した賞」をヴィニシウス・グイソロフィさん、「最優秀成績賞」にはマウリシオ・ファヴェロさんがそれぞれ選ばれた。
 今月八日に九十八歳の誕生日を迎える西村代表に、卒業生のアデルソン・ダ・シルバさん、片岡ミツオさん(17、サンパウロ州ソロカバ)、ラファエルさんの三人から木彫りの龍が送られた。
 西村代表は挨拶の場で、卒業生を労い、自分の経歴について述べた後、「これからも好意を持って学校を助けてあげて欲しい。学校のことを思ってほしい」と学校への思いを語った。
 式の終了後には、日系三世の山崎千津薫映画監督が四年前に撮影した、西村代表のドキュメンタリー映画が放映された。僅かな一部の関係者は見ていたのだが、公開されるのは初めてのことだった。また、去る十月二十六日に同地で公演を行ったユババレエ団の映像も放映された。
 来年山梨県へ実習を行いに行く片岡さんは「この三年間で農業や人付き合いなど様々なことを学び知ることが出来た。日本で学べることをしっかり学んできたい」と涙を流し、三年間に思いを馳せながら話した。

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