ホーム | 日系社会ニュース | パ国イグアスー 太鼓工房で待望の3尺太鼓が完成=100周年のブラジル=各地の公演で〃活躍〃へ=民族歌舞団「荒馬座」も使用

パ国イグアスー 太鼓工房で待望の3尺太鼓が完成=100周年のブラジル=各地の公演で〃活躍〃へ=民族歌舞団「荒馬座」も使用

ニッケイ新聞 2007年12月19日付け

 【パ国イグアスー移住地発】去る十一日、当移住地にある太鼓工房で面の直系が三尺(九十・九センチ)の巨大な和太鼓が誕生した。今後、このような大きさに適う太さの材料を移住地で確保できる可能性がないため、同太鼓工房が手がける最初にして最後の大太鼓となる。
 今回の材料は、イグアスー地方に自生しているカナフイートで、Poltophoorum dubiumという学名を持つ樹種だ。初めて製作を手がける大きな太鼓のため、材料を取り寄せてから完成するまで一年以上の歳月を要した。直径四尺を超える材料の胴をくりぬいて表面に丸みを持たせてから乾燥する期間が必要だからだ。
 太鼓は楽器となるため、期待する音色の素材になる度合いまで乾燥させるにも熟練の感性が求められる。三尺太鼓は匠の技の集大成でもある。この太鼓の製作に関わったのは石井吉信棟梁(山形県出身)を筆頭に(順不同・敬称略)沢崎琢磨(東京)、沢崎雄幾(東京)、幸坂佳次(秋田県)、黒沢貢次(群馬県)、大野ミゲル(二世)、伊藤清志(二世)、福井一朗(岩手県)、澤村壱番(高知県)らのベテランと、青年の大山嗣彦と植村秀一(両名とも二世)。
 材料はもとより、牛革もパラグアイ製で、工房でなめした。金具も手作りだ。錨だけは硬い材料がパ国内で入手できないため日本から取り寄せた。移住地に太鼓工房ができたのは二〇〇三年のこと。その年の六月に最初のパラグァイ国産和太鼓が誕生した(本紙〇三年十一月二十六日報道)。イグアスー産の太鼓は、徐々にブラジルとアルゼンチンに普及が進み、今ではブラジルで相当数のメイド・イン・イグアスー太鼓が活躍している。
 移住地には鼓組(つつみぐみ)と鼓太郎(こたろう)という成人と年少者の太鼓グループがあり、パラグァイ国内だけでなく、ブラジル、アルゼンチン、ボリビア、ウルグアイでも公演活動と演奏指導を行い好評を得ている。指導しているのは東京学芸大学を卒業している沢崎兄弟だ。
 三尺太鼓は来る二十七日、イグアスー日本人会サロンで挙行される恒例の鼓組・鼓太郎年末公演で移住地の人たちに初披露される。ブラジルでは来年三月、日本人移住百周年の記念公演をサンパウロ、パラナ、サンタカタリーナ州で行う予定の日本の民族歌舞団『荒馬座』が、この三尺太鼓を活用するようだ。身体中をゆさぶるような三尺太鼓の響きは強烈だ。

image_print