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法律改正で共済廃業続出か=在日外国人医療にも悪影響=野口さん「あと2、3年の猶予を」

ニッケイ新聞 2007年12月19日付け

 「このままでは、善意の共済まで廃業に追い込まれるところが続出してしまう」との危機感をあらわにするのは、在日外国人向け健康保険会社のパイオニア、在日外国人就労者共済会(VIVA VIDA!)=神奈川県=の野口重雄理事長だ。ブラジル事務所の打ち合わせに先月二十三日来伯、三十日に帰国した。
 外国人就労者受け入れに関する諸問題を討議する外国人労働者問題協議会=事務局・神奈川県=の事務局長にも就任しており、デカセギ問題解決に強い関心を寄せる。
 共済にはもともと規制する法律がなく、それを悪用する業者が出たため、金融庁は昨年四月から改正保険業法を施行した。〇八年三月末までの猶予期間に、今までより条件の厳しい保険業者か少額短期保険業者(少短業者)にならなければ、適用対象外になるか廃業するしかない。
 業態を保険業に変えるのは、大変複雑で経費がかかる。「本来、そのような保険会社の及ばない範囲をカバーするような、助け合いから始まったのが共済」と同理事長は強調する。
 事実、昨年八月末までに金融庁に届け出た共済は四百団体弱あったが、その後、少短業者を目指す決断をしたのは約三分の一にあたる百三十一団体にすぎない。うち、すでに登録を済ませたのはわずか三団体。このままでは大半が廃業する可能性がある。
 「これは共済契約者を無視した、共済潰し以外の何者でもない、という印象は免れない」と同理事長は語気を強める。
 廃業した共済の加入者契約を他の保険・少短業者に移転できない場合、受け皿のない加入者が大量に生まれる可能性がある。
 この件に関する特集を組んだ『週刊東洋経済』十一月十日号は、「移行処理のやり方次第では、二百万人とも三百万人ともいわれる共済加入者が宙に浮く」と問題提起し、「共済難民問題という〃時限爆弾〃が発破への時を刻んでいる」と警鐘を鳴らす。
 在日ブラジル人を中心とする約五千人の加入者を持つ外国人就労者共済会。理事長は「従来は年四万九千八百円の掛け金で、二百万円までの医療費を保障してきたが、少短業者の条件を満たすには八十万円に下げ、掛け金もあげざるを得ない」と眉をくもらす。
 不安定な雇用状態を強いられる外国人就労者にとって、医療は頭の痛い問題だ。今でも静岡県や愛知県などのデカセギ集住地の多くは、外国人が国民健康保険に加入できない。外国人自身も数年のみの就労を理由に、自己負担が大きい社会保険に加入したがらない傾向がある。
 その結果、地方の公立病院などでは無保険の外国人がケガや病気になって治療を受け、その費用が未払いになるケースがあとを絶たない。野口理事長は「うちの共済はセーフティーネット(安全網)として機能している」と強調する。
 「もちろん、困難は多くても法改正に合わせた努力は続けていく」とし、少短業者登録を目指すべく手続きを進めている。ただし、作業は煩雑で、多くの団体にとって来年三月末では実行不可能な条件があるという。「あと二、三年の猶予があれば無事に作業を終えられる団体も多いはず」。
 「今のままでは法律改正によって、逆に本来の役割が果たせなくなる危険性がある」と訴えた。

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