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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年1月9日付け

 昨年末、日系の保育園・学校経営のベテラーナの一人が「(若い人たちに)ついていけない」ともらしたのをきいた。嬉しさ半分、淋しさ半分の言葉と受け取った。もらしたのは、旧日伯実科女学校創立者の二代目、作本郷原登美子さんである▼同校は、戦前移民がたくさん渡航してきた頃、一九三二年の創設といわれる。折り目のきちんとした良妻賢母の育成を目指した学校であった。生徒の親と学校の関係をいえば、学校方針に親側が従っていた、といえようか▼奥地の営農で少し余裕ができた移民たちは、娘を上聖させ、同校に入れた。登美子さんは、創立者の父母に厳格に育てられ、学校を継いだ。もちろん〃精神〃も継ぎ、両親の遺志に沿う教育と、新しい理念の追求につとめた。戦後、校名が改められ「日伯ますえ保育学園」。先年、娘が三代目の園長になった▼昨年末、保育学園の卒園式、終了式、学芸発表会が催された。会場は劇場であった。記念のフェスタはなかった。これは、園児の親たちと教職員の合議の方針であるらしい。「実(じつ)を取る」ということだろう。カリキュラムもトリリンガル、日本文化、情操涵養、ダンス・遊戯、と幅広い。当節の高学歴の親たちの希望が反映される。学校同士の競合もあるし、あり方が変化する。登美子さんは、学園の充実に不満はないのだが、やはり少し寂しいようだ▼新年、世の中の進展は昨年に増して早く、めまぐるしいだろう。取り残されないようついていきたい。(神)

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