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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年1月22日付け

 「親殺し」に「子殺し」が―やたらに多い。先だっては大阪の守口市で生後18日の礼弥ちゃんが、強盗に入った男に口と鼻に粘着テ―プを張られ窒息死するという事件が起こった。母親も縛られ身動きできなかったそうだし、こんな非道で残酷な犯罪はない。40年も50年も連れ添った愛妻が寝たきりになり、看病に疲れた夫が手に掛ける心の苦しさには同情もするけれど―▼青森県の八戸では18歳長男が、母と弟妹3人を殺害し、自宅に放火までした。サバイバルナイフで腹や首を切りつけ刺殺したのだが、なんとも惨い。警察が調べたところ、母親の腹部には、人形らしき固形物が埋め込まれていたそうだ。これはもう凶暴さもながら、事件の怪奇さと異常性を物語る▼関係者の証言によると、この一家は複雑な家庭環境だったらしい。父母は離婚し子供ら3人は施設に預けられらそうだし、長男は小学校のときに不登校になる。このときは保護司の励ましもあり再び通学したのだが、中学生になると粗暴さ目立つようになる。その原因の一つは―母親の飲酒の見方が強い。長男も「お母さんも酒を止めて」と何回となく注意したが、それでも酒は続き溺れたらしい▼こんな凶行に走った少年は漫画が好きだったが、それも凶悪な犯罪や暴力を描いたものでナイフも10数本買い求めていたという。どうやら仲の良くない母との関係などから「悪」に引きずられたような気もするのだが、ある事件の背景を追ってゆくと、目には見えない環境や厳しい状況が浮かんでくる。この陸奥の国は八戸の母と弟妹殺しの怪事件も探れば探るほどに難しい。 (豚)

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