ホーム | 日系社会ニュース | 高知県人会=苦しい運営=収入見込めるイベントができぬ=会館立地が悪いので=もうすぐ創立55周年記念式典=4万3千レ工面の必要

高知県人会=苦しい運営=収入見込めるイベントができぬ=会館立地が悪いので=もうすぐ創立55周年記念式典=4万3千レ工面の必要

ニッケイ新聞 2008年2月19日付け

 「高知県人会が最初に白旗をあげたら県人の名誉に関わる」「明日食う米がない状況」――。ブラジル高知県人会の第五十四回定期総会が十七日、サンパウロ市ピニェイロス区の同会会館で開かれた。席上、毎年二万レアルの赤字を計上し、貯金が底をつくなど、会の財政が悪化している現状の説明が、高橋一水会長はじめ役員からこうした表現で行われた。同県人会は今年、創立五十五周年と移民百周年の節目の年にあたり、祝賀式典や各記念事業を計画。その予算も、母県の援助費(見込み)などを除いて、約四万三千レアルを同会で工面する必要があり、その資金捻出の方法が論点となった。また任期満了にともなう役員改選で、現職の高橋会長ら現執行部の継続が満場一致で決議された。
 「こんな(財政)状況になったことに大きな責任を感じています」――。冒頭あいさつで高橋会長は、こう切り出した。
 会計報告によると、昨年末の同会の貯金は約七千レアル。現在はさらに諸経費が重なり「貯金は無くなった。来月の職員の給料を払うのも難しい」という。
 その理由に同会長は、県人会がこれまで集客力のあるイベントなどを開催できなかった点などを説明。
 同県人会館は閑静な住宅街にあり、多くの人を集めてのイベント開催が難しい。そのため以前、同会でイベントを開催した際、近隣住民から告発された騒音訴訟があった。その結果、賠償金と弁護士費用など総計三万レを支払うことになり、会の財政を現在まで締め付ける要因になっている。「完済までは残り数カ月だ」という。
 またそうした事情からカラオケ教室などのイベントが会館で行えないほか、立地条件の悪さから学生などへの部屋貸しなど期待できないという。
 こうした理由から毎年二万レアルの赤字を計上。年に一度の日本祭りでの九千レアル前後の収益がメインだが、到底足りない状況だ。現在、同会長は会館に個人名義の小切手を置き、「必要にあわせて使っていい」と職員に話しているほどだ。
 緊迫する財政状況のなか、今年は六月十五日には県人会創立五十周年式典をおこなうことが決定している。その経費など約四万三千レアルを県人会自身でどのように工面するのかが大きな課題。同会長は「まず私が七千レアルを出す。副会長らには五千レアルをお願いしたい」とし、出席会員からの協力を仰いだ。
 さらに同会長は、財政建て直し案と会の存続方法をめぐって、ニッケイ新聞の取材に対し、会館売却案を提示。その売却利益の利子で会を運営し、その経営も「若い県人子弟に中心になってもらうべき」と話した。ただし会館売却にあたって、母県から「適性な市場価格で売ること」が条件にあげられており、早期売却も難しい状況という。
 一方、その代替案としてリッファや県人会の各支部に資金調達の割り当て案を提示したが、「リッファもどれだけ販売できるか不明。現状での寄付集めも会員離れにつながる恐れがある」と危惧した。
 こうした状況のため同会では、昨年五十レアルだった年会費を百レアルに値上げすることに決定。今年は七千レアルの会費収入を見込む計画だ。
 自身の思いとは裏腹に、役員や一般会員から強く推されての会長続投に、高橋会長は「ありがたい話だが、これ以上の力は発揮できない。これからはいろんなイベントを考えられる若い力が必要」と強調。今期限りでの退任をほぼ表明し、今年の記念事業は、同会長や現執行部が責任もって取り組むと述べた。
 〃深刻な内容〃が審議されたが、文野雅甫さんの軽快な司会などもあり、会は和やかに進行。総会後の昼食会は婦人部らの手料理に舌鼓。集まった四十人ほどの会員らは、酒を片手に楽しそうに話に華を咲かせていた。

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